栗村修の“輪”生相談<75>20代男性「(股間の)ポジションがしっくりきません」
大変質問しづらい内容なのですが、いわゆる“チンポジ”がしっくりきません。
短距離のレースなどで集中しているときは良いのですが、ロングライドなどゆっくり走っているときに気になってしまいます。プロのレーサーでもこういった悩みを抱えている方はいらっしゃるのでしょうか。
(20代男性)
えー、今回は特別に15歳以上の方限定とさせていただきます。輪生相談初のR-15ですね。
ご質問を拝見したとき、僕は30分ほど固まってしまいました。男性サイクリストにとってあまりにも重要な問題を突いているからです。質問者さんがおっしゃる「チンポジ」とは、×××・ポジションの略称です(よね?)が、なぜか、どのポジショニングの本にも「×××」の項目はありません。自転車の普及を考える上で、もはや逃げることは許されないと、そう思ったわけです。
まず大前提ですが、股間にああいうものがついていると、端的に言って邪魔です。それはプロでもアマチュアでも変わりません。だから、サドルポジションを調整したり、時にはサドルを交換したりします。もちろん形状には個人差がありますから、この部分に関してもポジショニングに正解はないのですが。
ではその「邪魔」の内容ですが、いくつか代表的なものを挙げてみましょうか。①サドルによる圧迫②ケの巻き込み③擦れる――とこんな具合でしょう。
①はもっとも多い問題で、場合によってはしびれてしまう、という報告も僕のところに上がってきています。この対策は2つで、圧迫の少ないサドルを探すことと、ダンシングを織り交ぜること。特に後者は重要で、形状にぴったりのサドルを使っていても、ずうっとシッティングではしびれちゃいます。
また、この問題に関して、かつて男性機能へのダメージが話題になりました。が、あくまで僕の経験則ですが、たぶん大丈夫です。僕の知る選手たちは、自転車を降りても元気みたいです。
さて次は②の巻き込みですが、これはもう、原因となるケを剃ってしまうのが一番です。ただしカミソリを使うと肌へのダメージが怖いのですが、巻き込み事故の防止のためならば、バリカンで6~3mm程度に整えれば問題ありません。
しかし予想がつくように、下手をするとケの頭がレーパンからこんにちは、という事態になりかねません。「剣山」状態で走っていると公然わいせつで社会的落車ということもありえますから、長さを調整するなり、注意しましょう。
③の、パッドと擦れるトラブルについては、ワセリンやシャモアクリーム(レーパンのパッドに塗るクリーム)の使用が効果的です。今はパッドが良くなったので擦れることも減りましたが、雨の日などは要注意ですよ。
と、ここまでお答えしてきて気づいたのですが、質問者さんがおっしゃる「しっくりこない」とはポジションではなく、フォームの問題の恐れもあります。安定しないとか、不意に前屈するとか。
フォームについては、しかるべき角度をつける器具とか、そういう便利なものはないのですが、見落としてはならないのはレーパンですね。レーパンが緩いと、フォームが安定しないわけです。
海外のトッププロをご覧になってください。皆、いろんな意味で強者揃いですが、その強者があまり存在を主張することはない。それは、レーパンが体にフィットしているからなんですね。
初心者のおじさんなんかによくあるパターンとして、緩めのレーパンを選んでしまって、股間がだらしなくなっていることがあります。特に、ビブショーツタイプではない、肩ひものないレーパンだとずり落ちてきますから、なおさらです。中で暴れて、擦れる原因にもなります。
だからレーパンは、ビブショーツタイプでかつ、ぴったり目を選んでください。フォームも安定し、ふらつくこともなくなるでしょう。
(編集 佐藤喬)
一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。
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