「大量訴訟」めぐる波紋
告訴は権利の行使、それとも権利の濫用?//ハンギョレ新聞社
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「告訴王」カン・ヨンソク弁護士、調査委委員会に回付も
「和解金商売」「適法救命手続き」めぐり議論に
最高検察庁の「恐喝罪などに適用」方針の発表に
「悪質な書き込みの被害者を加害者扱いする」との声も
「一般人と法律家の大量告訴を
同様に評価はできない」との意見も 例1 会社員のイさん(35)は、今年2月、映画『ミッション・スクール』の監督カン・ウィソク氏から800万ウォン(約74万円)の損害賠償を請求された。カン氏は、2013年10月の「国軍の日」に、大規模な軍事パレードに反対し裸でデモをすると発表したことに対し、「バカ野郎」と書き込むなど、カン氏を誹謗するコメントを4回書いたというのが理由だった。カン氏は昨年5月、イさんをはじめ、自分を誹謗する書き込みをしたネチズン200人を、侮辱容疑で告訴した後、このうち起訴猶予処分を受けた人などを対象に民事訴訟を続けている。 例2 会社員ヒョン・ジョンヒさん(45)も昨年12月、ピョン・ヒジェ・メディアウォッチ代表に150万ウォン(約14万円)の損害賠償を請求された。 2014年1月、ピョン氏と関連した記事に「彼らの言葉通り、法規定に従うべきであって、言い張っているから聞いてあげてはならない。おバカはおバカなりに」というコメントを書いたというのが理由だ。ピョン氏は昨年、約600人のネチズンに民事訴訟を起こしたことを明らかにした。ピョン氏は先月、ハンギョレとの電話インタビューで「左派側が(保守団体に対し)多くの訴訟を起こしているため、私たちも対抗するために(訴訟を)起こした」と語った。 大韓民国父母連合が最近、自分たちを風刺したり、批判したコメディアンと記者を相次いで訴えており、カン・ヨンソク弁護士が「告訴を濫発している弁護士として品位の維持に反した」という理由で、ソウル地方弁護士会の調査委員会に付託されたことで、「大量・無差別告訴」の適切性をめぐり議論になっている。「脅かすのが目的の訴訟」「和解金を狙った商売」という批判と、「適法な究明手続き」という反論がするどく対立している。 警察署に行ったこともない市民にとって、訴訟に巻き込まれるのは恐ろしいことだ。大量訴訟は、このような点を狙った和解金交渉につながるという批判もある。社団法人オープンネットのキム・ガヨン弁護士は「裁判所からの訴状や捜査機関からの出席要求を受け取ると、当事者は怯えることになる。この点を狙って適切な時点で示談を要求する」と大量告訴の闇を指摘した。刑法の侮辱罪が憲法上の表現の自由を萎縮させるという批判も続いてきた。 実際にヒョンさんは「ピョン代表側から和解する意思があるなら、(示談金は)どのくらい考えているのかと尋ねられた」と話した。セウォル号事故当時、放送局とのインタビューを通じて海洋警察の名誉を毀損したと起訴され、無罪を宣告されたホン・ガヒェさん(28)は、昨年9月に侮辱の疑いで大邱地検にネチズン515人を告訴したが、当時大邱地検は和解金を支払った点を考慮し、75人に対しては公訴権なしで処理したと明らかにした。 このような訴訟を専門に担当する弁護士も現れている。カン弁護士は、自分への悪質な書き込みをしたネチズン400人を直接告訴した以外にも、ピョン・ヒジェ代表の大量告訴にも法律代理人として関与している。昨年ホン・ガヒェさんの告訴事件とカン・ウィソク氏の事件の法律代理人も同じ人だ。昨年4月、大検察庁(最高検察庁)は、和解金目的で複数の人を訴え、不当に和解金を要求した場合、恐喝罪や不当利得罪などを適用するという「インターネット上の悪質な書き込みをめぐる告訴事件の処理方案」を発表した。 しかし、ほとんどの人にとって、このような訴訟は、個人の人格権を保護し、名誉を回復するための正当な手段という反論もある。ある人権弁護士は「訴訟は、法律で保障されている個人の救済手段だ。最小限の名誉を回復しようとする被害者の努力を非難してはならない」と語った。高麗大学法科大学院のハ・テフン教授は、「大量告訴を告訴濫用とは言えない。しかし、一般人と法律家の大量告訴を同じようには評価できない。法律家は大量訴訟が法律的に妥当であるかどうか、一般人よりもよく知っているため」と指摘した。 イ・ジェウク記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr ) 韓国語原文入力:2016-05-15 20:14 http://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/743948.html?_fr=mt2訳H.J