シリア停戦維持できるか 米国務長官、ジュネーブで協議
- 2016年05月2日
シリアの部分停戦が破綻寸前となっているなか、ケリー米国務長官は1日、スイス・ジュネーブ入りした。停戦維持にむけて国連特使やサウジアラビア、ヨルダンなどの外相と協議する。特に北部アレッポでの戦闘を止めさせることが、最優先課題だと長官は述べた。アレッポではここ10日間で市民250人以上が死亡している。
ケリー国務長官は「今まさにロシア側と直接協議をしているところだ」と述べ、「今が何より大事だ。ロシアの協力を求めている。アサド政権がロシアの言い分に耳を傾け、国連安保理を通じた国際社会の強力なメッセージに反応するよう求めている」と強調。長官は、国連安保理決議が「国全体の戦闘停止」を呼びかけ、「さらに国全体が人道援助が受けられるよう」シリア政府に呼びかけていると指摘。
「しかし実際にはそうなっていないし、そうなる見通しもない」と長官は認めた。
米政府はアサド政権が市民に無差別爆撃を重ねていると批判しており、停止に向けてロシア政府の仲介と圧力を求めている。一方でシリアとロシアの両政府は、アレッポ爆撃は聖戦主義勢力ヌスラ戦線を標的にしたものだと主張している。2月の部分停戦合意にヌスラ戦線は参加していない。
ケリー長官の発言に先立ちロシアのセルゲイ・クラレンコ中将はフメイミム空軍基地でロシア報道各社に対し、「アレッポ州の平穏な状態」回復のため「積極的な交渉」が行われていると話した。中将は詳細には触れなかったが、首都ダマスカス周辺の「平穏状態」はグリニッジ標準時2日午後9時まで延長されたと述べた。
中将の発言はロシアの態度に変化があったことを示唆する。ロシア政府は4月30日の時点では、シリア軍の戦闘を止めさせることはしないと表明していた。そのままシリア軍の爆撃が続けば、和平協議は完全に破綻すると懸念されている。
シリア軍と穏健派反政府勢力との一時的停戦合意は、特にシリア最大都市アレッポの支配をめぐり完全に破綻している。政府側と反政府側に分かれるアレッポでは、市内の大部分が破壊され、水道も電気も数カ月前から停止している。
ジュネーブでは10日から新たな和平協議が始まる予定。