「韓国では、この殺菌剤を加湿器の水に混ぜて使うのが一般的で、20年以上前から売られてきたため、これだけ被害が大きくなった」と先の関係者は説明する。
韓国家庭の不安は尽きず、有力地方紙の忠北日報は、呼吸器が弱い8歳の娘がいる母親(37)の声として〈娘が赤ん坊だった頃、加湿器殺菌剤を使った。ニュースを見るたび、そのせいではないかと考えて罪悪感にさいなまれる〉との嘆きを紹介。怒りに震える遺族と市民団体の代表が5月に入って、英国ロンドンに乗り込み、レキット・ベンキーザーの株主総会の前でデモを敢行したほどだ。
事件は生活用品全体の買い控えなど経済にも悪影響を及ぼし、大手量販店チェーンのEマートでは、過去1週間(4月27日〜5月3日)の間に、防虫剤13%▽芳香剤10%▽消臭剤13%▽除湿剤46%−と売り上げがそれぞれ減少したという(オンラインの経済専門ニュース、Eデイリー)。
『徹底比較 日本vs.韓国』(河出書房新社)の著書があるノンフィクションライターの高月靖氏がこう話す。
「事件発覚後、オキシー社の依頼で殺菌剤を分析し、健康被害との因果関係について『明確ではない』としたソウル大獣医学部教授(57)が実験結果の捏造疑惑と収賄で検察に身柄を拘束された。その教授が弁護士を通じて、『毒性が検出された実験結果を見逃したのはミス』と捏造を否定したほか、『死をもって潔白を証明すると遺書を残していた』とも伝わり、自殺をほのめかしたと現地で大騒ぎになっている」
朴槿恵(パク・クネ)政権下でなぜか相次ぐ大事件、大事故。政権の疲労の色は濃くなるばかりだ。