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孤高の凡人

Public Image Limited

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平成のブルース

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写真提供 https://www.facebook.com/takuya.tomiyoshi

 

外は雨。激しい雨。
私は今この激しい雨に打たれている。
涙を誰かに見られぬように。
泣いてる事を知られぬように。

ママ友にバレたくない夫の職業は○○! | 今日のこれ注目!ママテナピックアップ | mamatenna

私は建設業で働いている。
世間での建設業に対するイメージはそれはもう酷いもので、例えば土方の妻がママ友に旦那の職業を聞かれた際に、声高らかに言えなかったりする。一瞬間があったのち、「建築」と答える。建築と答える事によって夫が建築士である可能性を孕ませ、その場を回避する。

自身が愛したであろうメーンを誇れないなんて、何て可哀想な生き物なのだ。
でもそれは仕方がない事だと思う。
ママ友界は怖いところで、twitterを遥かに凌駕するその拡散力は、下の下の妻にとって非常に生き辛い場所であるのだ。
心中お察しの刑に処す。
 
しかし、本当に悪いのは、そのような行動を妻にさせ、心の臓を締め付けられるような気持ちにしてしまう私たち下の下のメーン達なのではないのかと私は思う。
建設業、とくに職人の世界は過去の話で言えば丁稚というモラトリアム期間を乗り越え、教えてもらえない技術を見て学び、親方の怒号に耐え、元請けの理不尽を乗り越え、一人前になってきたのだ。技術的な事を言えば、現在とそれほど変わりはないが、それらは技術ではなく、人間を形成する事に役立ってきた。
 
しかし、現在は違う。
建設業は人手不足である。
猫の手どころか、借りられるならジャンガリアンハムスターの手でも借りたい。その向日葵の種を食べるしか能の無いお手手でも借りたい状況が多々ある。
その状況を仕事があると勘違いした若者達は、知識、技術、努力を身に付けぬまま独立する。
しかしそんなジャンガリアンハムスターでも仕事は回ってくるので、勘違いはそのまま加速し、かのハンカチ王子みたいに「カイエン乗りてぇ」とか言ってしまう。結果、建設業自体の技術は低下し、メイドインチャイナのクオリティを遥かに下回り、メイド喫茶に溺れ、冥土に行く。
しかしこの問題は建設業だけではなく、多くの業界が抱えているのではないかと私は思うのだ。
 
最近では独立してフリーランスとして働く若者が目立つ。少し話が逸れるが『ミニマリスト』なんかも、散々浪費を重ねてきた御仁が悟りをひらき、菩薩のようなおめめで、「そんなぎょうさんモノいらんわ」と言っているのなら理解は出来る。しかし若者がいきなりミニマリストになり、iPhoneとMacBook Airと数枚の白シャツだけで生活するというような状態が私は怖い。もっともっと無駄遣いをして、馬鹿な事をして、人生を謳歌してほしい。無駄が無駄ではないという事に気がついて欲しい。
 
仕事に関しては、月10万あれば生活できる!と嘯いて、フリーランスを名乗り、シェアハウスなどで生活する彼らは『結婚』するつもりがないという方が多い。
それはするつもりが無いのではなく、出来ないのではないのか?と思ってしまう。
私なんか娘の習い事の月謝を払う為に今日も粟、稗を食べているというのに。
結婚しないという事は、子供を作らないということで、解決されない少子化、からの、全業界の人手不足。この無限ループが完成し、自らの手によってこの国を滅ぼす若者達を、私はこの下らない障害ばかりの生涯をかけてまあるいおめめで見つめていようと思う。
 
そしていつか土方の妻が声高らかに旦那を誇れるよう、下の下の私は両手に持った粟と稗を口に運びながら、この下らないループの日々を回し続けようと思う。
 
ジャンガリアンハムスターのように。

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