なでしこリーグ首位の日テレに敗れたものの、AC長野の選手に温かい拍手を送るAC長野のサポーター=15日午後、長野市の南長野運動公園総合球技場
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サッカー・なでしこリーグ1部に今季初参戦しているAC長野パルセイロ・レディースの観客動員数が、昨季までに比べて急増している。クラブ側は、ホーム試合で長野市に昨年3月に整備された新球技場を使っていることに加え、得点が多く試合展開に躍動感があるため、これまで女子サッカーに興味が薄かった層を引きつけているとみる。チームの安定的な運営には、ファンの裾野を広げ、関心を持続させていく工夫が欠かせない。
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AC長野パルセイロ・レディースがホームの長野市南長野運動公園総合球技場に日テレを迎えた15日。結果は1―5で敗れたが、5160人が訪れた会場ではオレンジ色のタオルを持った観客が最後まで声援を送り続けた。観客数は、この日の1部リーグの他の4試合(420〜2812人)を大きく引き離した。
エースで日本代表の横山久美選手の活躍もあり、ホームの観客数は1試合平均3779人。1部リーグ10チームの中で、INAC神戸レオネッサ(3155人)を抜いてトップだ。昨季(1330人)の2倍以上で、クラブが今季目標とする2千人を大きく上回っている=グラフ。
「点も入るし、展開が早くて面白い。ついつい大声で応援してしまう」と、この日観戦した長野市篠ノ井布施五明の水口和代さん(72)。これまで女子サッカーにはあまり興味が無かったが、AC長野の1部リーグ昇格を機にスタジアムへ。「スタジアムが選手と近く、一体感がある」と、毎回応援に来ている。
本田美登里監督は2013年に着任以来、ゴールにこだわる攻撃的なサッカーを目指してきた。AC長野の町田善行・管理部長は「ハラハラドキドキする試合の組み立ては、初めて見る人にも分かりやすく、引きつけられる」と分析。昨年3月に同球技場が新設され、選手や観客が試合に臨む環境が整ったことも要因の一つに挙げた。
クラブによると、同球技場を拠点とするようになった昨季から、試合会場を借りる経費は3〜4倍に上昇。14年のチーム運営経費は1300万円、昨季の経費は集計中だが、1部昇格に伴う選手やスタッフの増員などで、今季は昨季よりも膨らむ見通しだ。昨季以降はスポンサー収入も増え、観客数も目標を上回っていることなどから、現時点では支出が増える分をカバーできるとする。
パルセイロ・レディースは14年から試合観戦の有料化に踏み切った。一般の当日券料金は今季、千円から2千円に値上げしたが、AC長野は「球技場の充実した設備を踏まえると、割安に抑えている。女子サッカーを知ってもらうことを優先したい」とする。
球技場に足を運ぶ人の裾野を広げようと、現在は高校生以下は無料。正規価格の40%引きで購入できる優待券などを、スポンサーや地元の篠ノ井地区住民自治協議会などに今季、これまで1万枚配った。篠ノ井地区住民自治協議会によると、優待券は家族で観戦するためにもらいにくる人が目立つという。
ただ、県サッカー協会の坂巻富子・女子委員長(58)=諏訪郡下諏訪町=は、女子サッカーの日本代表がリオデジャネイロ五輪出場を逃したため、関心が低くなることを懸念。AC長野の観客動員が好調なことを踏まえ、「持続させるために、クラブ側と協力しながら女子サッカー文化の普及に努めたい」とする。
なでしこリーグは現在、各チームの観客増加に向けた取り組みについて聞き取り調査を進めており、集約後、各チームに情報提供する。AC長野の町田管理部長は「他チームのノウハウも、盛り上がりを維持していくために生かしていきたい」と話している。