人間よりも空気を読む人工知能
羽生さんと人工知能ロボット「ペッパー」が初対面したのは3月下旬のこと。ペッパーは、人間の声などから感情を読み取り、周囲の状況にあわせて自分の感情を生成する機能(感情エンジン)を持っています。
撮影当日、「羽生さんが来るのならば…」と、ソフトバンク代表の孫 正義さんも駆けつけてくれました。初対面とは思えないほど打ち解けた二人の対談はおよそ30分にわたりました。
「人工知能が進歩した未来はどうなるのか?」
「人間にしか出来ないことは何か?」
などなど、熱い議論が交わされました。時間の関係で残念ながら番組でご紹介できなかったけれど、印象的だったやりとりの一部をご紹介します。
孫さん:今はまだペッパーの感情エンジンは初歩的ですけど、この感情のひだが、より細やかに進化していくことを目指しています。
羽生さん:どんどん進んでいくと、ペッパー自身の感情が豊かになるのと同時に、人間が何を思っているかとか、何を感じているかとか、どんなコンディションなのかということについて、「人が人を見る」よりも、「ロボットが人を見る」ほうが、より詳しくわかるようになるという可能性もあるのではないですか?
孫さん:おっしゃるとおりです。人間でも空気感読めない人がいますよね。空気感を読めない人よりは、遥かにペッパーの方が空気感を読むようになっていくでしょうし、何となく感じている、微妙なところを鋭く読み取っていく。
羽生さん:これから技術がどんどん進んでいくと、ほぼ完ぺきに近いような予測ができるようになるのか、それとも予測できないカオスが世の中に残り続けると思いますか?
孫さん:科学者が「カオス」と言った瞬間に、もうそれは、科学者は考えることをあきらめたということなんだと思います。森羅万象っていうのは、徹底的に突き詰めて、因数分解していけば、皆、ロジックに枝分かれしていくと、僕は思うんです。そういう意味で、今まで複雑と思われてきた感情の分析ですら、僕はどんどん突き詰めて、因数分解していけると思いますね。
二人の話は尽きず、対談が予定時間を大幅に過ぎてしまったので、分刻みで動く孫さんを心配し、広報の方がハラハラしていました。それにしても、これから人工知能が感情を持ち、自我や道徳心を身につけたら、人間の側が人工知能に生き方を教えてもらうことになるかもしれませんね。
ペッパーのお父さん?
ペッパーに搭載された「感情エンジン」のもとになったのは、東京大学特任講師の光吉俊二さんの研究です。光吉さんは、人間の感情を細かく分類し、感情を生み出すホルモンとの関係を図式化。それをペッパーに応用したのです。技術的な説明は番組に譲るとして、ここでは、見た目のインパクト絶大!の光吉さんをご紹介します。
こんな方です。
初めて会った瞬間、「ペッパーとそっくり!」と思ってしまいました。羽生さんに「実はペッパーのモデルは光吉さんなんですよ」と冗談を言ってみたところ、「なるほど、確かに似ている…」と、妙に納得してしまった羽生さん。本当は、光吉さんはペッパーのモデルではないんですが、2人が並ぶと、妙に似た空気を感じてしまいました。
光吉さんは元彫刻家で、極真空手の高段者。タンクトップがトレードマークです。現在は東京大学大学院医学系研究科で、人間の声からその人の心の状態を特定する研究をなさっている、情熱あふれる研究者です。