読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

黒子の観察者

テクノロジーやマーケット、働き方(ビジネススキルなど)、あとエンタメとグルメについて書き綴ります。

【アドテク】Google Ad Exchangeの新機能と広がるヘッダービディング包囲網

DSP アドテク Google マーケティング メディア

Googleがディスプレイ広告管理ツール、DoubleClick Ad Exchange(Adx)の新機能「Optimized Private Auctions」「optimized pricing in the Open Auction」のリリースを同社のブログにて発表しました。重要な変更なので恐らくどこかのメディアが翻訳記事を出すかと思いますが、こちらでも考察を書いてみようと思います。あくまで前述のブログ記事を私なりに理解、解釈した内容ですので、事実と異なる内容があるかもしれませんがご容赦ください。

http://corp.fluct.jp/img/common/logo/adexchange.png

広告枠の買い付けには優先順位がある

まず、現状のRTB(Real Time Bidding)における一般的な広告枠の買い付けスキームを紹介します。RTBといっても全ての枠に全てのDSPやアドネットワークが入札できる訳ではなく、短い時間ながら優先的に何度も「買う/買わない」のやりとりをを繰り返しています。上から下に順序立てて進むのでウォーターフォール(滝)と表現されたりします。

細かくは媒体によって様々ですが、大体このような順序です。

純広告>PMP(Imp/CPM保証>CPM保証>Private Auction)>Open Auction

リリースされた新機能とは

次に、今回の新機能について簡単にまとめると以下となります。

  • Optimized Private Auctions
    Open Auctionでも高単価の入札条件を提示している場合は、Googleの自動最適化によりPrivate Auctionの段階で買い付けできるようになります
  • Optimized pricing in the Open Auction
    今までは各広告枠ごとに媒体が手動で決めていたOpen Auctionの最低入札金額(Floor Price)を自動で最適化できるようになります。

新機能のメリットは何か

大きなメリットは2点あると思います。

  • より正しい場所(広告表示)に、正しい金額のお金が支払われる
    ウォーターフォール化されたRTB取引の弊害として、広告主、媒体双方の機会損失が挙げられます。Open Auctionに参加している広告主はいくらお金をもっていても前の階層で買われてしまったら手も足もでません。媒体視点で例を挙げると、Open AuctionでCPM1,000円で買う気がある人がいても、Private Auctionで500円で売買が成立していたらメディアの収益は半減してしまいます。常にOpen Auctionでそんな取引ができる保証もないので、PMPのFloor Priceをいくらにするかはとても難しい判断となります。
    そのため、各DSPやアドネットワークは直接媒体と上位階層での買い付けができるよう交渉したり、入札金額がFloor Priceを超えたら自動的にPMPのIDを経由して買い付けるようにしたりと、価値の高い広告表示(購買確率が高いユーザー/タイミングなど)を逃さないよう対策をしてきました。(個人的にはこのPMPの使い方は本来の用途から逸れていると思います)
  • 媒体側の運用コストが減る
    Floor Priceの金額設定は媒体の収益改善作業において手間のかかる作業で、今回の自動化によりリソースに余裕ができる媒体社も多いと思います。逆に今までその作業に割いていた時間を使い、いかに良いコンテンツや広告商品を生み出せるかが更なる収益改善の鍵となるのではないでしょうか。

 ヘッダービディング対策とも

Googleがブログ冒頭で「我々のゴールは広告主と媒体の繁栄、および継続的なビジネスの創出を手助けすることです」と述べているように、今回の機能により市場原理に則った健全なエコシステムができてゆくと思います。しかし、それと同時に媒体社がヘッダービディングを使う理由を潰しにいっているようにも見えます。ヘッダービディングとはウォーターフォール化した入札フローを一元化するための技術で、競合SSPが対Adxの切り札の一つとして推しています。なぜなら多くの媒体社がGoogleの広告サーバーを使っている現状では、他のSSP経由の広告はGoogleの売れ残りであることがしばしばあるからです。逆に既に優先的に多くの広告在庫を売れているGoogleにとっては、ヘッダービディングが普及してもあまりメリットは無く、相対的に売り上げが他社に移ってしまいます。

▼ヘッダービディングの説明はこちら

今回の機能に限らずGoogleは「ヘッダービディングやる必要なくね?」と媒体社に思わせるような環境をどんどん構築してゆくと思います。競合SSPがGoogleに対して今後どのような対抗手段を講じるか興味深いですし、何より競争により持続的で透明性の高い市場となることを願っております。

 

 

blog.blackwatcher.net