熊本市の空き賃貸物件数 震災前の14分の1に

熊本市の空き賃貸物件数 震災前の14分の1に
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一連の地震でおよそ3000人が避難生活を送る熊本市では、避難所の次の住まいとして賃貸住宅の確保が課題となっていますが、2万戸以上あった市内の空き物件が、地震の後、14分の1のおよそ1500戸にまで減少し、極端な供給不足に陥っていることが分かりました。
熊本市では、一連の地震で16日午後の時点で3184人が避難生活を送り、住宅の被害が深刻となるなか、避難所の次の住まいの確保が課題となっています。熊本市は、市内のアパートやマンションなどを「みなし仮設」として借り上げて賃料を取らずに避難者に提供するため、入居できる空き物件の数を調べました。
その結果、地震の前は推計でおよそ2万1700戸あるとされていましたが、地震の後の先月下旬の時点では、14分の1のおよそ1500戸にまで減少していたことが分かりました。
市や不動産業者によりますと、アパートやマンションも地震の被害を受け、市の調査で「倒壊のおそれがある」と判定されたほか、「安全性に問題がない」と判断された物件でも、余震を心配する大家が貸し出しをためらっているケースも多くあるということです。
また、入居が可能な物件についても限りがあるうえ、地震の直後から申し込みが集中し、供給が追いつかない状態が続いているということです。大家の中には、すでに解体を決める人もいて、避難所の次の住まいを巡る事情が極めて厳しい実態が見えてきました。

不動産業者は

熊本市内で賃貸住宅の物件を紹介している不動産業者には、連日、被災者からの相談が相次いでいますが、希望にかなう物件がほとんどない状況が続いているということです。
このうち、熊本市中央区の不動産業者では、地震で多くの住宅が被災した影響で、賃貸住宅への入居を希望する人からの相談が地震の前の2倍近くに増えています。しかし、地震の前にあったすぐに入居できる賃貸住宅40戸のうち13戸は、地震の被害で貸し出しができなくなりました。さらに、残る27戸は地震の後の先月20日までにはすべて入居者が決まり、現在、貸し出し可能な物件は、地震後に空き物件となった2戸で、供給が追いつかない状態が続いています。
この業者によりますと、被害の程度が比較的小さいと思われるような物件でも、大家や管理会社が住民の安全を確保できないとして貸し出しをためらうケースもあるということです。この業者は、空き物件を探そうとほかの業者とも連絡を取り合っていますが、ほとんど見つからない状況だということで、今後、物件はさらにひっ迫するのではないかとみています。
この業者で賃貸を担当している井本賢成係長は、「今は空き物件を十分紹介できず、困っている人の力になれない状況で、とても歯がゆいです」と話していました。

個別の事情にあった支援が必要

熊本地震による被災者の生活再建を支援している兵庫県の外郭団体「人と防災未来センター」の菅野拓研究員は、住宅の被害については地震が相次いでいる現状を考慮しながら、個別の事情に合った支援をすることが必要だと話しています。
菅野研究員は「熊本市内の賃貸物件が足りない背景には、今も地震が相次いでいてオーナーなどが物件の安全確保に時間がかかっている現状もある」と話しています。そのうえで「今後は行政が賃貸物件の増加を促すようなサポートが必要だ。また、被災者の生活再建については、一律の対応には限界があるので行政はできるかぎり、個人や世帯の被害の状況に目を向けながら必要な支援を検討することが必要だ」と話しています。