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【社会】中学生が機転 認知症女性救う 下校途中に道聞かれ気付く
栃木県足利市で二月、道に迷っていた認知症の女性(83)が一人の中学生の機転によって保護され、自宅に戻ることができた。「自分が声を掛けたことで、おばあちゃんが無事に家に帰れてよかった」。当時、市立西中学校一年だった高沼(たかぬま)アイラさん(13)は、小学五年の時に学校で「認知症サポーター養成講座」を受けた経験が生きたと喜ぶ。 (稲垣太郎) 「○○町って、どこですか」。二月十九日午後六時ごろ、ソフトボール部の活動を終えて下校途中だった高沼さんは、自宅から約四百メートルの路上で、高齢の女性から道を尋ねられた。 市内に実在するこの町名を知らなかった高沼さんは「すみません。分からないです」と言い、いったん帰宅した。しかし女性のことが気がかりで、父親(62)にその町のことを聞いて走って戻ると、女性は最初に会った場所から二百メートルほど離れた所にいた。 「さっき道を聞かれた者なんですけど、ご自分のお名前分かりますか。ご住所分かりますか」 名前は答えたが、住所の番地は出てこなかった。高沼さんは「ちょっと待っててください」と言い残し、再び走って自宅へ。「どうすればいい?」。父親に「家に連れてきなさい」と言われ、また走って女性の元へ戻り、家に連れ帰った。 その後、父親から電話を受けた市が女性の夫(78)に連絡。女性は認知症だったと分かった。市職員とともに高沼さん宅を訪れた夫はホッとした様子で「ありがとうございました」と話し、女性は無事に帰宅した。 中学の担任だった長竹恵海(えみ)教諭(26)は「困っている人がいたら放っておけない子。頼まれなくてもできてしまう」と教え子の活躍にほほ笑んだ。和泉聡市長も「まちの誇りになる」とたたえた。 養成講座で学んだ知識を見事に生かした高沼さんは、「これからも困っている人がいたら、ちゃんと自分から声を掛けて役に立ちたい」と話している。 ◆90分受講で認定 全国に約713万人認知症サポーター養成講座は、患者の増加に対応するため厚生労働省が2005年に始めた「認知症サポーターキャラバン」事業の一つ。自治体や企業が、住民や社員らを対象に開講する。修了した人は認知症の人や家族を支援するボランティアの「認知症サポーター」に認定される。 専門の養成研修を受けた「キャラバン・メイト」が講師となり、教科書や映像で認知症の症状や、接する際の心構えなどを教える。おおむね90分の講座を1回受けると認定される。 警察庁の集計では2014年に認知症が原因で行方不明になったとして警察に届けられたのは1万783人で、2年連続で1万人を上回った。通行人の通報などにより、全体の65.4%が届け出の受理当日に、97.2%が1週間以内に所在確認できた。 キャラバン・メイトの養成や講座開催の支援を担う「全国キャラバン・メイト連絡協議会」(東京都新宿区)によると、サポーターは昨年末現在、全国に約713万人いる。受講希望者は、在住の自治体の高齢福祉主管課に問い合わせる。受講料は無料。 PR情報
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