「去年の6月に飼い始めた手乗りのセキセイインコが卵を産みました。1週間くらいの間に5個です。卵を抱く様子はありません。どうしたらいいのでしょうか。今はまだそのままにしてあります」
鳥が卵を産むのは成熟の証しですから、決して悪いことではないのですが身体的な負担は当然大きいですから、対応を間違えるとトラブルになります。
まず、卵は取り除かないでください。鳥は1回の産卵で産む卵の数が決まっていて、これを一腹卵数(ひとはららんすう)といいます。セキセイインコの場合は大体4〜7個といったところでしょうか。ご覧になったように、この数の卵を1度に産むのではなくて、やはり決まった間隔で1個ずつ産んでゆくのです。産卵の間隔はセキセイですと約48時間です。産卵の期間中に卵を取り除いてしまうと、この一腹卵数まで卵を産み足そうとする習性があるので身体にさらに負担をかけてしまいます。ですから。鳥に卵の存在を見せておく必要があるのです。卵はそのままにしておいても良いのですがケージ内に卵がゴロゴロしているというのもお掃除などに問題が出ますね。適当な大きさの菓子箱のような浅い容器にまとめておくのが良いかと思います。
また、産卵してすぐに卵を抱くとは限りません。このことからも、いましばらくは卵は親鳥に任せておきましょう。もし抱卵(ほうらん)するようであれば親鳥の卵を抱きたいという欲求に応えてやる必要があります。今回の卵は無精卵ですから孵化(ふか)はしませんが。セキセイの抱卵期間は約18日です。抱卵するにせよしないにせよ、孵化する日数までは卵はそのままにしておきます。この日数を過ぎてから、卵も箱を取り除きます。なかにはこの日数を超えて抱卵を続ける個体もいますが強制的に撤去して構いません。抱卵にも体力を使うので、なるべくその負担を減らしたいからです。
先にも述べましたが、産卵から抱卵にいたる期間は非常に体力を消耗しますので、餌には気を使いたいものです。まず、卵の殻を作るためにカルシウムを大量に消費しますからボレー粉やイカの甲などのカルシウム源となるものは不可欠です。青菜も欠かせません。また市販の栄養サプリメントを併用するのも良いですね。
温度も大切です。体力を消耗している時の低温は親鳥の体調に大きく影響します。ケージに温度計を設置してチェックすると共に、夜間でも最低22〜23度程度で過ごせるようにヒーターなどで暖房の工夫をしましょう。
お母さんは産卵を終えて疲れています。どうぞ、いたわってあげてください。
塩谷亮(しおたに・りょう)
日本ペット&アニマル専門学校講師、つくば国際ペット専門学校講師。幼少時より様々な動物に関心を持ち、採取〜飼育に明け暮れる。玉川大学農学部農学科卒業後、大手総合ペットショップに入社。水草専門店舗に始まり、総合ペット店舗店長、統括バイヤーを務めた後に独立し、ペットショップ経営も行った。現在は、各種爬虫類の繁殖技術の確立、原稿執筆、セミナー講師などを中心に活動中。
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