社員が一人辞めた
5月頭、GWの終わりと共に、営業をやっていた社員が辞めた。T君(27歳男)である。
若手の社員が会社を辞めて転職することは珍しくもない。引き止めはしたのだが、本人の意思は固く、その後の身の振り方も決まっていたようなので、僕は途中から引き止めるのをやめて、彼がその後の人生をどう過ごそうとしているのかを聞いてみた。
どうやら、T君は起業を目指すらしい。
「起業する」のではなく、「起業を目指す」。まずは少し分野を変えて営業という職について学びなおした後、2年後くらいを目処に起業する、という計画だった。
僕たちは小一時間ほど話をした。
起業について、会社設立について、ビジネスについて、そして人生設計について・・・。その中で、T君はしきりに「僕は起業して成功したいんです」と繰り返していた。性交成功することについては、アグレッシブな僕である。まずは彼の成功とは何なのかを、ホり下げてみた。
彼の言う成功とは・・・
T君にとっての成功とは、ひとことで言うと「金銭的な成功」であった。
年収にすると数千万円が目標で、欲しいものを金額を気にせずに買えて、いいマンションに住み、充実した生活を送りたいということだった。
彼は今、27歳。今後、サラリーマンを続けたとしても、年収1千万円に到達するのも険しい道であると心得ており(彼の年収をぶっちゃけると380万円である)、大して年齢も変わらず会社を経営している僕や友人を見て、「正直、憧れている」と言い放った。素直で屈託のない人間である。
そんな彼の「成功」のために、僕はアドバイスをしたいと思った。
そこで、以前Webのどこかで見かけてEvernoteにメモっていた、「有能な人と成功する人の違い」というノートを探し漁り、T君に話してあげることにした。
ここでいう「成功する人」は、T君の成功像としてピッタリな「中小企業のオーナー社長」というイメージである。
(※このノートは、元ネタはこちら。この記事や他で得た情報を僕なりにまとめなおしたものなので、完全オリジナルじゃありません。)
有能な人と成功する人の違い
まずは結論から。
有能な人とは、建設的で思慮に富んでいるが、それを実行に移す行動力も備えた人物である。自分には厳しいが、周りの人には親切・寛容で、周囲をやる気にさせる前向きな力に満ち溢れている。
一方、成功する経営者は、一言で言えば「ゲスい」。
なぜそうなるのか。
それは結局のところ、企業というのは利益を上げるための存在であり、言い換えると搾取するための仕組みだからである。
搾取の対象となるのは、従業員の労働力と、取引先や顧客の利益である。
従業員の生産性を上げる、外注先をコンペさせる、仕入れ原価を交渉する、客単価を上げる・・・
これらは利益を増やすための企業努力として当然のことであるが、やっていることの本質は搾取である。
もちろん、そういうふうに見えないように、企業は工夫をするのだが。
例えば、取引先(仕入れ先)に対してさらりと「え?安くしてくれるよね?」と投げかける面の厚さ(あるいは部下に、「何でこれ安くなってないの?」と詰める厳しさ)が、経営者には必要となる。
後は言い方の問題である。平身低頭して「なんとか頑張っていただけませんか?」と言えば多少は穏便に済むかもしれないが、結局言ってる内容は変わらない。取引先としてはたまったものではないが、そこはお互いの思惑が交錯するところである。
こういう行為を当然のように行うことに普通の人は抵抗があるが、息をするように値下げ交渉をする経営者の姿を、僕は何度も見てきた。
話を戻そう。
有能な人とは
「いいか、T君。」話を続ける僕。
「よく自己啓発本とかに載ってる、有能な人物像は、こうだ。」
1)本当の目標や夢を大切にする。利益以外に、方法論や思想を重視する。
目先の利益に惑わされてはいけない。大切なのは、利益の向こう側にある、本当の目標や夢である。そしてもっと重要なのは、その目標や夢を達成するまでの「過程」である。
2)継続は力なり。研鑽を重ね、来るチャンスのために準備しておく。
世の中で一番強い力は、継続の力である。しっかりと研鑽を重ねよう。チャンスは誰にでもやってくるが、それをモノにできるのは準備を怠らなかった者だけである。
3)課題は成長のチャンス。前向きに楽しんで取り組む。
ピンチこそチャンス。何か問題が起こったときこそ、自らの成長のためのチャンスと捉え、前向きに取り組もう。
4)他人を批判せず、自らに責任を求める。
うまくいかないのは、他人のせいではない。他人を変えることはできない。うまくいかないなら、自分の考え方ややり方を変えてみよう。
5)自ら動く。他人に頼らず、自分で学び解決する。
人を動かすには、感情に働きかけなくてはならない。そのためにはまずは自分から動く必要がある。自ら先頭に立ち、解決を目指そう。周りは、後ろからついてくる。
6)甘い汁は信じない。
世の中に甘い汁なんて存在しない。それが存在するという誘惑に乗せられてはいけない。世の中全てのものには対価があるのだから。
7)人には親切で寛大に。自らは謙虚に。
周りの人への親切は、巡り巡って自分に返ってくる。人には親切にしよう。そして、人を赦そう。自分は決して驕らず、謙虚な態度を忘れないようにしよう。
一通り説明を終えたら、T君が
「いい話ですね、そういう人間になりたいです!」と、目をキラキラさせながら答えた。
僕は話を続けた。
「そう、こういう人物なら、きっとどこの会社にいっても通用するだろうね。」
「この話はもっともなのだが」
「会社を経営して成功しようと思ったら、これではまずいところがある。」
「え?何がダメなんですか?」とT君は怪訝そうに言った。
「全部だ。」と僕は答えた。
成功する人とは
僕はさらに続けた。
「会社を経営するってことは、これまでと全く逆の立場になるってこと。」
「いま言ったような有能な人物は、会社のメンバーとしては有能だけど、経営者にはもっと違った考え方が求められる。」
「会社を立ち上げて成功するのは、次のような人だ。」
1)現実的な利益を重視する。夢なんて考えないリアリスト。
夢や目標よりも大事なのは、目先の利益である。貧すれば鈍する。絶対にそうなのである。まずは現実を見よう。利益に対して、今の100倍シビアになろう。
2)継続しても成功しないと見極めれば、すぐに諦める。
継続が無駄とは言わないが、花開かないと分かったらすぐに諦めよう。得意な分野に固執するな。チャンスが失われるのは、準備していないからではない。得意分野に固執してしまうからである。
3)課題を疎む。何も問題なく回っていることが一番よい。
面倒ごとは、起こらないに越したことはない。徹底して問題を毛嫌いし、問題の起こる隙間をつぶしにかかろう。問題を起こす人間がいたら、芽を摘もう。(T君の顔は引きつっていた)
4)責任は他人になすりつけ、自らは生き残る。
うまくいかないのは自分のせいではなく、人や環境に問題があったと考えよう。何か問題が出たら、人を盾にするのが基本中の基本である。自ら矢面に立つ将軍がどこにいる?
5)できるだけ自分は動かない。他人を積極的に使う。
自ら動くのは愚の骨頂である。人に任せて問題ないことを、決して自分がやってはいけない。人を手足のように扱うことができて、初めて大きなことを為せる。
6)いかに甘い汁を見つけ出すかに心血を注ぐ。
世の中は広い。中にはまだまだ甘い汁が存在する。それが本物か偽物かを見分けられるようになろう。
7)利益を持ってくる人には親切にするが、それ以外には厳しく。自らは傲慢になる。
経営者は傲慢でいい。傲慢でなければできないことが、本当にたくさんある。皆から慕われなくてもいい。重要な人物以外には、厳しく接しなければならない。
以上。精神構造からして、普通の人とは異なるのである。中には「こいつ病気か?」と心配になるような人もいる。
「どう?参考になった?」
黙って話を聞いていたT君に、僕が問いかけた。
彼は、視線を下ろし、2~3分ほど口をつぐんで考えていた。
「確かにゲスいっすね。。」とT君が口を開いた。口元は笑っているが、目は笑っていなかった。そして、続けざまに、
「そこまでして成功したいですか?」と聞いてきた。
間髪を入れず、僕は答えた。
「したいね。君もしたいだろ?(成功も性交も)」
「はあ・・・」(T君。「こいつ頭おかしいんじゃねぇの?」という眼差しを僕に向けながら)
・・・
そう、そういうことである。
上記のようなことを厭わず、それでも金銭的な成功を収めたいと考える人は、かなり少ない。
普通の人にとって、人をアゴで使ったり、周りに責任を押し付けたり、取引先の引きつる顔を見たり、一日中利益のことばかりを考えたりするのは、ストレス以外の何物でもない。
羽振りのよい中小企業経営者は、もともとこういうことに耐性があったのかそれとも慣れてしまったのかのどちらかであり、
長く会社経営を続ければ続けるほど、自然淘汰されて図太い人ばかりが生き残っていく。
そういう人たちは、何人もの従業員やいくつもの取引先から少しずつ搾取を重ね、年間で数千万円というお金を捻出して、自分の肥やしとしているのである。
まさにゲスの極みですね。
(今日はこれが言いたかっただけ。ほんとキャッチーで好きだな、この言葉)
※一方、成功を超越した「大成功」を収める経営者たちには、この法則は当てはまらない。いろんな方向にぶっとんでいるから、彼らの考えはもうよく分からんのである。