■女の子と知り合いたい一心で進路を決めた
「高校時代は男子校でラグビー部ですから、とにかく女の子の友だちがいないわけです。なんとか知り合いたいとチャンスを求めて、高校3年生の夏に参加したのが、女子が多いと評判のボランティア研修でした」
伊達みきおさんがサラリーマンとして5年間を過ごしたのが介護の世界。なぜ福祉関連の仕事を選んだのか、その理由を尋ねると、当時の男同士の友情や、その当時のできごとを一緒に思い出しているのだろう、楽しそうに答え始めた。
「同じ学校の男ばかり4~5人で参加しました。誤解してほしくないのは、2泊3日の研修自体はとてもきちんとした団体が運営している真面目なものだったということ。
確かに当初、僕らは女の子が目当てでしたけど、介護や手話を習い、実際に現場でお手伝いが必要な方々と接していくうちに、たった2泊3日の体験でしたが、『人と接する仕事は面白い』と思うようになったんです」
その後、バイト先として選んだのは介護用品を扱う会社だったこともあり、同級生に先んじて、働いて「ありがとう」と言われる喜びを知った伊達さん。素直にその気持ちを持ち続けて、卒業後は福祉関連の専門学校へ進学する。
しかし3か月で中退することに。福祉関連の学校では女性が7~8割以上を占めるといっても過言ではない。伊達さんが入学した学校も例に漏れず、8割が女性だった。女性の友だちがほしいはずが、あまりに多くの女性に囲まれるのは伊達青年にとってギャップがありすぎて、かなりしんどい体験だったようだ。
そして言いにくそうにひと言「……ダンスの授業がね……」。なるほど、18~19歳という多感な年ごろの男子が、女性に囲まれてダンスなど、その辛さは想像に難くない。
「辞めちゃったんです、3か月で。なにか釈然としないというか、もう働いた方がいいんじゃないかって思ったんですね。そのままバイト先だった会社に入社しました。
バイト先といっても自分で選んだわけじゃなくて、オヤジが知り合いの会社を紹介してくれた――まぁ、つまりはコネ入社ってわけです」