思えば3年半もの間、ウソみたいな円安と株高に日本中が浮かれてきた。いつか絶対、終わりが来ると分かっていたのに……。逆回転を始めた経済の歯車が、日本企業をどんどん追い詰めていく。
たった6日間で
最大10連休となった今年のゴールデンウィーク。その裏で、日本経済に決定的な「異変」が起きた。4月28日からのわずか6日間で、円相場が6円も急騰。5月3日、1年半ぶりに1ドル=105円台を付けたのだ。
これは円高の「最終防衛ライン」とされる大台だ。だが、折しも安倍総理はヨーロッパ歴訪中、また麻生太郎財務相と黒田東彦日銀総裁は、アジア開発銀行年次総会出席のためドイツにいた。
「投機的、急激な円高を懸念している」「為替の無秩序な動きは、経済の安定に悪影響を与える」「必要なら、しかるべき対応をとる」
多忙の中、三人は夜となく昼となく、公の場でこの「三箇条」を繰り返した。
「安倍総理は、4日に行われたドイツのメルケル首相との会談でも同じことを述べました。しかしメルケル首相は、『競争的な通貨切り下げには勝者はいない』と返した。明らかに、これまで円安誘導政策に終始してきた日本と安倍総理への皮肉でしょう」(全国紙経済部デスク)
世界に「口先介入」と見透かされた安倍総理らの言葉には、一時的な効果しか望めない。
遡れば、すでに1月末のマイナス金利導入発表で、円高のスイッチは入っていたのだ。その流れは、4月28日、黒田総裁の「追加金融緩和見送り」の決断によって確定した。投資家たちの失望は、円高をさらに急加速させた。
流れを読み違えて、悪手に悪手を重ね、景気対策はついに「詰み」に追い込まれた——。
利益が兆単位で消える
一方、同じくゴールデンウィークの前後、多くの上場企業が'16年3月期の決算発表に臨んだ。だが、その中身は、一言で言って壊滅的だった。
減益、減益、また減益。中には任天堂(連結純利益が前期比6割減)やIHI(営業利益が前期比6割減)といった、大幅な落ち込みを見せた企業もある。その主な原因が、ここ数ヵ月の急激な円高にあることは明らかだ。
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