米国のオバマ政権で北朝鮮の制裁問題などを担当したアインホーン元国務省調整官が先日、ソウルを駆け回った。まるで、韓国の一部で持ち上がっている核武装論の火種を燃え上がる前に消してしまえという特命でも受けたかのように見えた。核武装を主張する与党院内代表との会談では、相手の言葉を遮って批判する一幕もあった。院内代表が「強力な韓米連合戦力を持っていることを幸いに思う」と発言するや、アインホーン氏にすぐさま「両国の連合戦力を疑わないと言いながら、なぜ核武装を追求するのか」と言い返され、恥をかいたというニュースが韓国で報じられた。
アインホーン氏の論理は正しい。同盟を信じるなら、相手が反対する核武装論を持ち出すべきではない。だがもし、同盟を信じられなくなったらどうすればいいだろうか。与党院内代表の立場でそこまで論じることは難しかったに違いない。アインホーン氏が討論バトルに勝利して帰国してから約10日後、トランプ氏の米大統領選の共和党候補指名が確定した。彼について長い説明はいらない。韓国などに対する「北朝鮮の挑発、勝手にやって」という馬鹿げた言葉に、彼の本性が表れている。アインホーン氏なら、こんな同盟に運命を任せられるのだろうか。
韓国では韓米同盟を「血盟」と呼ぶ。米国でも「血で結ばれた同盟」という表現を時おり使うが、彼らにとって韓米同盟は北大西洋条約機構(NATO)と米日同盟に次ぐものだ。韓米同盟は元々、米国が望んで誕生したものではない。韓国政府が「北侵」「反日」カードまで使って去ろうとする米軍にすがった結果だった。それゆえ、大統領によって関係の浮沈があった。韓国が国内の大統領選と同じくらい米大統領選に注目するのはそのためだ。米国の心変わりが怖いのだ。