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【主張】
ヘイト法案 拡大解釈招く懸念がある
「不当な」「著しく」といった言葉は解釈があいまいで、恣意(しい)的な拡大解釈を生む懸念がある。正当な批判や言論がその対象となる可能性もある。
朝鮮学校などを対象に「朝鮮人を保健所で処分しろ」「日本からたたき出せ」といった街宣活動を行った団体は刑事裁判で有罪判決を受け、損害賠償を命じられてきた。判決は、国連の人種差別撤廃条約が禁止する「人種差別」に該当すると断じてきた。
日本の司法は、これまでも差別問題に概(おおむ)ねまっとうに向き合ってきた。定義もあいまいな理念法の成立を急ぐことで、新たな混乱を招くことにならないか。
ヘイトスピーチについて、安倍晋三首相は平成25年5月の国会で「結果として自分たちを辱めている」と指摘し、「日本人は和を重んじ、排他的な国民ではなかったはずだ」と述べた。
そうした道徳心の再確認や、機運の醸成こそ重要だ。これは、日本人のあり方の問題でもある。