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自民、理念なき妥協の産物 ヘイトスピーチ法案 将来、不当な規制可能性も
参院法務委員会で12日に可決されたヘイトスピーチ解消法案は、自民党の理念なき妥協の産物といえる。当初は憲法が保障する「表現の自由」を重視し、法規制には慎重だったが、他法案の処理を“人質”に審議促進を迫る野党に屈した形だ。今回は罰則規定を見送ったが、付則には内容の再検討に道を開く規定も盛り込まれた。不当な規制を求める動きにつながりかねず、禍根を残したといえる。
「ヘイトスピーチは恥ずべきものだという共通認識でやってきた。ぜひその趣旨を多くの国民に共有してもらいたい」
法案提出者の自民党の西田昌司氏は、12日の同委で法案の必要性をこう答弁。質問で「一緒にヘイトスピーチ根絶のため、国会の内外で力を尽くそう」と呼びかけた共産党の仁比聡平氏と、共闘ぶりを演出した。
さらに仁比氏が与党案への賛成討論を終えると、与党の委員はこぞって拍手。参院選前の対決ムードはみじんもなく、全会一致の可決は一見スムーズにみえた。
しかし、自民党内には、「不当な規制につながりかねない法律が必要なのか」との不満がくすぶる。新法を作らなくとも、刑法の侮辱罪など現行法で対応できるとの意見も根強い。