中国で「文化大革命」再来とささやかれる背景を取材しました。
フジテレビ系(FNN) 5月15日(日)18時48分配信
今の中国・習近平政権について議論されるときに、話題に上がる言葉があります。「文化大革命」です。
ちょうど50年前に始まった、この「文革」は、表向きは政治や思想の改革でしたが、実際は、故・毛沢東主席が、権力奪還を狙い発動した政治闘争で、1,000万人もの犠牲者が出たとされています。
まだ少年だった習近平国家主席も、当時、苦難の時期を過ごした1人でしたが、その習主席の政権下では、今、「文革」が再来しているとささやかれています。
それは、なぜなのか、背景を取材しました。
5月2日、政治の中心・人民大会堂で、毛沢東主席の絵をバックに歌うのは、「中国版AKB48」ともいわれるアイドルグループ「56輪の花」。
歌っているのは、革命の歌だが、この時、「習主席をたたえる歌」も披露されたという。
50年前の「文革」は、毛主席への「個人崇拝」を原動力に、党幹部や知識人に対する弾圧が、大規模に展開された。
現在の習政権下では、「反腐敗」と「言論統制」が強化されている。
この反腐敗キャンペーンで、主に摘発されているのは、江沢民元国家主席に代表される、いわゆる「上海閥」など、政治的に対立するとされる大物幹部ら。
神田外語大学・興梠一郎教授は「反腐敗キャンペーンというのが、政治的な目的があったことは明らかで、1つは江沢民、次は胡錦涛と。この2大派閥が残っていたわけですから、それを1つずつ、つぶしていくというプロセスが、ずっと続いている」と語った。
また、習主席の「個人崇拝」ともとれる動きが、ある村でも見られる。
習主席が、7年間過ごした村の史料館には、党の組織や軍の若者らが、次々と見学に訪れている。
来館者は「きょうは、『赤い教育(共産主義教育)』を受けに来ました」と話した。
「文革」のころ、15歳だった習主席は、党幹部の父親の失脚を受け、この貧しい農村に送られた。
当時の毛主席の神格化への反省から、中国共産党は、個人崇拝や現役党員の記念館建設を禁止。
しかし、この史料館の展示は、習主席の写真などを中心に展示しており、事実上の「習近平記念館」といえる。
2月、中国中央テレビは「習近平氏は、『人民日報』、『新華社』、『中央テレビ』の3つの主要メディアを視察しました」と報じた。
さらに習主席は、2016年2月、中国の主要メディアを相次いで視察した。
国営テレビでは、自らスタジオのキャスター席に座り、指示を出すような様子も見られた。
習主席は「真実で、全面的かつ客観的な状況を伝えることが、政策の判断材料になります」と述べた。
さらに、地方紙の編集責任者が、解雇される出来事もあった。
改革派の人物の散骨の写真に、「魂が海に帰る」と見出しをつけて報じたことが、「言論が死んだ」という、習主席への批判と判断された。
「文革」のキーワードと重なるような、これらの習政権の動きから、今、「第2の文革」という指摘が上がっている。
神田外語大学・興梠一郎教授は「文革を知っていれば知っているほど、『これは、どこかで見た景色だな』と、危機感が非常に強まっている。今の現状が維持できるか、自分の権力が維持できるのか、共産党の体制を維持できるのか、ものすごくおそらく不安があって、不安の裏返しで、これだけ締め上げている」と語った。
冒頭で紹介したアイドルグループのイベントも、その後、「文革を肯定した」と批判が続出し、党や北京市当局が釈明に追われる事態となり、開催の意図についても、臆測を呼んでいる。
文革再来となるのか、習政権の今後に、国内外の視線が集まっている。
最終更新:5月15日(日)20時40分