第2次安倍内閣は、近来まれにみる安定政権である。「安倍の言論弾圧」などといわれているのも、長期政権の「暗黙の圧力」が強いからだ。たとえば麻生内閣のときは「漢字が読めない」といった嘲笑的な報道が横行したが、今はマスコミがそういう報道を自粛し、朝日新聞は慰安婦問題の誤報を「自白」して政権との関係を修復しようとした。
この強さの原因として本書の基本的な見方は、御厨貴氏と同じく、菅官房長官が内閣人事局を通じて各省の幹部600人の人事を決めるようになったことだという。問題ごとに特命チームが組織され、官邸が党をバイパスして官僚機構を直接コントロールする「政治主導」が実現したのだ。
政策的には、内閣支持率を高める要因はない。安倍氏は金融政策で「デフレ脱却」して景気を劇的に回復させるつもりだったらしいが、物価はデフレに戻り、まもなく発表されるGDPの1Q速報値は4四半期連続でマイナスと予想され、経済は最悪だ。
安保法制でも失敗した。本来は内閣法制局の見解を変更して集団的自衛権を合憲とした上で、国会で技術的な問題を審議する予定だったが、法案審議とは別の憲法審査会で自民党の参考人が「集団的自衛権の行使は違憲」と述べたため、憲法論争が蒸し返されて国会が大混乱になってしまった。
つまり経済政策も政局運営もうまく行っていないのだが、内閣支持率は高い。政権を救っているのは、つまらない憲法論争しか争点の出せ得ない無能な野党である。民進党が安倍内閣に学ぶべきなのは、この程度の政権でも官邸が戦略的に官僚機構をコントロールすれば政権は維持できるということだ。
続きは5月16日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。
この強さの原因として本書の基本的な見方は、御厨貴氏と同じく、菅官房長官が内閣人事局を通じて各省の幹部600人の人事を決めるようになったことだという。問題ごとに特命チームが組織され、官邸が党をバイパスして官僚機構を直接コントロールする「政治主導」が実現したのだ。
政策的には、内閣支持率を高める要因はない。安倍氏は金融政策で「デフレ脱却」して景気を劇的に回復させるつもりだったらしいが、物価はデフレに戻り、まもなく発表されるGDPの1Q速報値は4四半期連続でマイナスと予想され、経済は最悪だ。
安保法制でも失敗した。本来は内閣法制局の見解を変更して集団的自衛権を合憲とした上で、国会で技術的な問題を審議する予定だったが、法案審議とは別の憲法審査会で自民党の参考人が「集団的自衛権の行使は違憲」と述べたため、憲法論争が蒸し返されて国会が大混乱になってしまった。
つまり経済政策も政局運営もうまく行っていないのだが、内閣支持率は高い。政権を救っているのは、つまらない憲法論争しか争点の出せ得ない無能な野党である。民進党が安倍内閣に学ぶべきなのは、この程度の政権でも官邸が戦略的に官僚機構をコントロールすれば政権は維持できるということだ。
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