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36年ぶりに開かれた北朝鮮の第7回朝鮮労働党大会が閉幕した。 金正恩第1書記は北朝鮮を「責任ある核保有国」とし、核開発と経済建設の「並進路線」を改めて強調。さらに新設の「党委員長」に就任し、権力基盤を一層強める形となった。 一方で、前回党大会では100カ国以上の外国政府首脳らが出席したが、今回はその姿がなく、国際社会から孤立する北朝鮮の立場を象徴する大会ともなった。 孤立の理由が北朝鮮の独善的な核・ミサイル開発にあることは言うまでもない。今年に入り、4回目の核実験を強行し、弾道ミサイルを次々と発射した。 いずれも国連安全保障理事会の決議に反しており、安保理は3月に追加制裁を決めた。北朝鮮の後ろ盾となってきた中国も制裁の全面履行を明言するなど、中朝関係は大きく冷え込んでいる。 それでも正恩氏は、核放棄どころか核武装を強化する方向を打ち出し、党の活動総括に関する大会決定書では「東方の核大国として輝く」とした。核保有国として「西の核大国」である米国と対等な立場で外交に臨む姿勢を鮮明にしたといえる。 米国に対し、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換して在韓米軍を撤退させるよう求めたのも、核を背景にした強気の表れだろう。 だが、その下で国民の暮らしは厳しい。韓国側によると、南北の経済格差は拡大し、現在の南北の1人当たりの国民総所得(GNI)の差は約21倍という。 正恩氏は経済不振を認め、国民生活の「決定的な向上」を目指して2020年度までの「国家経済発展5カ年戦略」を提示したものの、具体的な施策が打ち出されたわけではない。 ましてや、国連制裁で禁輸対象となった主力の石炭産業などに打撃が広がるのは時間の問題とみられている。しわ寄せが経済全体に波及するのは必至だ。 並進路線は、核抑止力を獲得することで国防費を増大させることなく防衛力の効果を高め、国民生活の向上に資金などを集中できるという考え方に基づく。 だが、核開発を続ける限り、国際社会での孤立は避けられず、経済立て直しは困難になる。そうした状況下で苦しむのは国民だ。 「世界の非核化に努力する」と言うなら、核開発をただちに放棄し、国際社会とともに歩む。それ以外に展望を開く道はないことを指導部はよく自覚すべきだ。
[京都新聞 2016年05月12日掲載] |