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【社説】

日産傘下で再建 三菱自、疑惑も解明を

 燃費偽装で揺れる三菱自動車が日産自動車の傘下で再建を目指すことになった。多くの雇用にも影響しかねない経営危機だけに、ぎりぎりの判断と受けとめたい。ただ、疑惑の全容解明は必要だ。

 軽自動車の燃費データ改ざん問題でブランドイメージが悪化した三菱自の販売は、急速に悪化している。

 リコール隠しによる二〇〇五年の経営危機後、三菱グループの支援で再建を進め、財務体質は安定してきた。ただ今後の補償問題や販売競争を見通すと、単独での再建は厳しい。三菱グループの支援も今回は期待できない状況だけに、軽自動車で提携関係にある日産の傘下入りは、ぎりぎりの決断といえる。

 三菱自は八社がひしめく国内自動車メーカーで下位とはいえ、連結の売上高は二兆円、従業員は三万人を超える大企業だ。部品メーカーなどの下請けも含めれば、雇用や地域経済に与える影響は極めて大きい。日産の傘下入りで合理化を求められる場面も予想されるが、雇用、地域経済への影響を最小限にとどめる努力と責任を果たしてもらいたい。

 三菱自の経営危機、そして業界再編につながることになった今回の燃費偽装について、いくつか指摘しておきたい。

 公表データと実際の燃費が乖離(かいり)している現実のためか、三菱グループの首脳から燃費データそのものを軽視する発言があった。だが、価格も維持費も安い軽自動車の購入者が燃費を重視するのは当然だ。燃費競争の背景には省エネや排ガスなどの環境性能、地球温暖化問題という国際的な課題があることを忘れてはいけない。三菱自はこの課題に応えられず不正に走ったともいえる。

 もうひとつは技術革新がある。株式市場では、既存の自動車メーカーから情報技術(IT)企業がしのぎを削る自動運転車や電気自動車(EV)の関連企業に資金が向かっている。技術革新には巨額の研究開発費や設備投資が必要で、この面でも三菱自は追い詰められていた。

 三菱自の十一日の記者会見では誰の指示、判断で不正が行われたのかという核心部分は明らかになっていない。

 不正会計の東芝と同じく、閉鎖的な企業風土の中で上層部からの暗黙の圧力、指示が原因だとすれば、グローバル化が進む中、日本的経営のあり方に関わる問題となる。全容の解明を求めたい。

 

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