「V字回復は不可能」人民日報記事が波紋
【北京・赤間清広】中国共産党の機関紙・人民日報に、「権威筋」を名乗る人物が「中国経済のV字回復は不可能」と語ったインタビュー記事が掲載され、市場で波紋を広げている。「習近平指導部の幹部が匿名で景気の長期停滞を予測した」と受け止められ、上海株式市場の株価が一時急落した。
掲載されたのは9日付紙面。権威筋は、中国経済の先行きについて「(少し時間を置いて回復する)U字形は不可能、(急回復する)V字形はなおさらだ。(停滞が長引く)L字形になるだろう」と指摘した。これを受けて上海市場の株価は9日に前日比3%安と大幅下落し、10日以降も下落基調が続いた。
市場が権威筋の発言に注目するのは「共産党の経済部門幹部で、習国家主席のブレーンを務める劉鶴氏ではないか」(アナリスト)とみているためだ。
これまでも人民日報に不定期に登場し、当局の政策の狙いなどを解説。昨年5月と今年1月に登場した際は、業績が悪化した国有企業などの淘汰(とうた)を柱とした改革の必要性を強調し、政府の過度な景気対策は改革を遅らせるとした。今回は厳しい景気認識に踏み込んだため、市場が反応したようだ。
中国経済の減速が続く中、市場では大規模な景気対策への期待が高まり、不動産市場などに投機資金が流れ込んでいる。権威筋の発言は、こうした動きをけん制し、指導部が改革続行の方針を示す狙いがあったとみられる。