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【政治】

オバマ氏 広島訪問へ 日本が謝罪求めない理由 原爆「講和条約で決着」

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 現職の米大統領として初めて被爆地・広島を訪問するオバマ米大統領に対し、日本政府は謝罪を求めない方針だ。多くの犠牲者を出し、今も後遺症に苦しむ人がいるが、戦後処理はすでに終わっているとの立場を取るからだ。 (関口克己)

 一九五一年に結ばれたサンフランシスコ講和条約に基づき、米国など四十八カ国の日本に対する請求権の問題は解決し、日本も連合国に対する全ての請求権を放棄した。

 日本が放棄した請求権は、戦争で生じた損害や苦痛への金銭的な賠償といった法的な請求とされる。外務省は政治的な言動に当たる「謝罪」を求めるかどうかは直接的には関係がないと説明する。

 だが九四年、当時・社会党の村山富市首相は国会で、米国に謝罪を求める気持ちはないかとの質問に「講和条約で決着がつけられている問題だ」と答弁。講和条約を理由に謝罪を求めない考えを明言した。

 核兵器使用が国際法違反とされていないことも、背景にある。戦時中の国際法(ハーグ陸戦条約)には、原爆使用を違法とする直接的な規定はない。今も明文化した条約はない。

 だがハーグ陸戦条約は不必要な苦痛を与える兵器の使用などを禁じており、広島と長崎への原爆投下を違法とする主張は根強い。六三年には、被害者が慰謝料の支払いを日本政府に求めた裁判で、東京地裁は「当時の国際法から見て、違法な戦闘行為であると解するのが相当」と指摘した。

 しかし日本政府はこの裁判で、原爆使用について「日本の降伏を早め、戦争を継続することによって生ずる交戦国双方の人命殺傷を防止する結果をもたらした」と主張した。九一年には外務省の小和田恒事務次官が記者会見で「当時の学説、国家の慣行から総合的に判断した場合、国際法違反と断定することは難しい状況だった」と指摘した。

 米国は原爆投下直後にトルーマン大統領が戦争終結を早め、多くの米兵を救うために原爆を使用したと主張した。オバマ氏の広島訪問も謝罪ではなく、追悼目的と強調する。

 

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