2016年05月14日

◆ 日本もタックスヘイブンだ

 タックスヘイブンとして、パナマやケイマン諸島が上げられているが、実は、日本もまたタックスヘイブンだ。

 ──

 タックスヘイブンの話は、前に述べた。
  → タックスヘイブン対策

 そのあとさらに調べると、とんでもないことがわかった。実は、日本もまたタックスヘイブンなのである。要するに、企業は税金をほとんど払わないで済む。
 「そんな馬鹿な!」
 と思う人は、情報を知らないだけのことだ。ググればすぐに事実がわかる。
  → 税金を払っていない大企業(検索)
 
 代表的な例として、トヨタ、三井住友、ソフトバンクという3社がある。

 (1) トヨタ

 トヨタは5年間、ずっと法人税を払ってこなかった。
   → 法人税 トヨタ 5年 - Google 検索

 (2) 三井住友

 三井住友銀行は 15年間、ずっと法人税を払ってこなかった。
  → 三井住友 法人税 15年 - Google 検索

 (3) ソフトバンク

 ソフトバンクは、利益の 0.006%しか税金を払っていない。
  → ソフトバンク 法人税 - Google 検索
 これは 2014年のデータだが、最近はどうかというと、何と、データを隠している。普通なら決算報告書に「法人税額」または「税引き前利益・税引き後利益」を掲載するのだが、ソフトバンクの決算報告書には、「税引き前利益」があるだけで、「税引き後利益」は記されていない。(記せば、納税額がゼロ同然であることがバレるからだ。)

 ──

 では、どうしてこういうことが起こるのか? これは、次のページに記してある。
  → 純益2兆円なのに。トヨタが5年も法人税を免れた税法のカラクリ
 一部抜粋しよう。
 トヨタが、5年間も税金を払っていなかった最大の理由は、「外国子会社からの受取配当の益金不算入」という制度です。これは、どういうことかというと、外国の子会社から配当を受け取った場合、その95%は課税対象からはずされる、ということです。
 たとえば、ある企業が、外国子会社から1000億円の配当を受けたとします。この企業は、この1000億円の配当のうち、950億円を課税収入から除外できるのです。つまり、950億円の収入については、無税ということになるのです。
 トヨタは詳細を公表していませんが、この「受取配当の非課税制度」を利用して、税金を免れていたことは明白です。

 要するに、同じく 1000億円の利益を上げるにしても、その利益を上げた場所を、日本でなく外国であることにして、外国からは配当収入の形で受け取ることにすれば、帳簿の操作だけで、日本における納税額を 5% まで激減させることが可能なのだ。
 これは、外国子会社配当益金不算入という制度である。この制度のおかげで、日本の会社はタックスヘイブンみたいな恩恵にあずかれるのだ。

 トヨタの場合は、たぶん遠慮がちにやっているので、海外子会社のある現地で納税しているのだろう。だから、2012年は別として、2013年度〜2015年度 の決算報告書では、「法人税等」の項目で、税引き前利益の3割ぐらいに当たる額を納税している。(法人住民税など。)

 一方、ソフトバンクの場合は、本気で脱税(節税)に力を入れているようだ。たぶん、ケイマン諸島のようなタックスヘイブンを利用している。そこにある子会社に利益を移転してから、今度は配当金の形で利益を日本の本社に移す。すると、日本の制度では(上記のように)配当金にはほとんど課税されないから、実質的には無税みたいになる。

 ここでは、「外国子会社配当益金不算入」という制度が決定的に重要だ。この制度のおかげで、日本の企業は法人税をほとんど払わないで済ませることが可能だ。それを実施しているのがソフトバンクだ。(たぶんホリエモンもそうだ。)
 というわけで、日本は「企業が税金を払わないで済む」という制度があるわけで、事実上、タックスヘイブンも同然となっているわけだ。

 ──

 では、このような「税逃れ」は、国全体ではどのくらいの規模で進んでいるか? それを知るには、国際収支のうちの「所得収支」を見るといい。


shotoku-shusi.png
出典:経産省



 日本では近年、所得収支が急増している。経済の伸びをはるかに上回る規模だ。アメリカの所得収支をも上回る。
 なぜこれほどにも所得収支が急増しているのか? 一例は、次の答えだ。
 「日本の技術力が急激に増加しているので、外国からの特許料収入が増えている」
 しかし、日本の企業の実力を知れば、そんな説は成り立たない、とわかるだろう。特許のランキングを見ても、日本は近年、落ち目になる一方だ。部分的には、韓国の後塵をも拝している。有機ELに至っては韓国に完全に抜き去られた。人工知能でもまったく後れている。日本の技術開発力はお寒い限りだ。
 ではなぜ、これほどにも所得収支が急増しているのか? 答えは簡単だ。こうだ。
 「節税のために、所得を子会社に移転して、所得を子会社からの配当の形にしているから」

 この場合には、「子会社からの配当」という形を取ることで、納税を免れる。それが、統計上は、「所得収支」に組み込まれるわけだ。
 つまり、日本が技術的に劣っているにもかかわらず、所得収支の額が信じられないほど急増しているのは、企業が脱税(節税)する形で、納税を免れているからなのだ。
 そして、グラフによれば、その額は 100億ドル(1兆円)を越えている。これは 2005年までのデータだが、最近のデータでは、何と 20兆円まで急増している。
  → 平成27年中 国際収支状況(速報)の概要 : 財務省

 この所得収支の全額がそうであるわけではないが、とにかく、その大部分は企業の子会社からの配当という形で、節税のためになされた額だと推定できる。(そうでなければ急増するはずがない。)
 仮にその分が 20兆円のうちの 15兆円だとすると、その3分の1ぐらいにかかる法人税は5兆円ぐらい。つまり、5兆円ぐらいが脱税されていることになる。これは、国全体の法人税の 11兆円という額の、半分ほどに相当する。それほどの額が、脱税されているわけだ。「外国子会社配当益金不算入」という制度のおかげで。
 これが、日本がタックスヘイブンであることの証拠だ。(企業にとって、だが。)
 


 [ 付記1 ]
 では、どうすればいいか? 
 もちろん、このひどい制度を改正しよう、という動きがある。しかし例によって、自民党の反対によって、実現しないようだ。それどころか、法人税をさらに引き下げようとすらしている。盗人に追銭。

 [ 付記2 ]
 では、どうすればいいか? 私としては、次のように答えよう。
 第1に、「外国子会社配当益金不算入」という制度を廃止する。脱税をするための制度(タックスヘイブンみたいな制度)を廃止する。
 第2に、経理を明朗にする。ソフトバンクみたいに経理を隠蔽することを認めない。企業の決算報告では、法人税額その他の納税額を詳細に公開することを義務づける。……このくらいは当り前だ。納税額の公開ぐらい、機密でも何でもないからだ。

 ついでに、子会社との所得のやりとりも公開させるといい。また、租税回避国にある子会社との財務関係も公開させるといい。これらも、脱税や所得隠蔽を回避するために必要だ。この件は、先の項目とも関連する。
  → タックスヘイブン対策
 つまり、所得隠しは、株主にとっては「利益隠し」に当たるから、そんなことをされたら、株主の損失になる。だから、そういう「株主にとって損失になる行為」が行なわれないよう、株主が監視できるようにするわけだ。このことで、利益を租税回避国に移すことを阻止する。

 [ 付記3 ]
 トヨタの決算報告(最近の分)を見ると、「法人税等」という項目の額が、税引き前利益の3割程度となっている。これを見ると、「ちゃんと払っているな」と思うかもしれないが、きわめて怪しい。「法人税等」と記して、「等」という文字が付いているのも怪しい。
 実際、この「法人税等」というのは、どこの国に払ったか記していないのだ。実際には、海外の国に大部分を払って、日本ではほとんど税を払っていないのかもしれない。その疑いは十分に成立する。
 こういう事情を明かすためにも、決算では納税額をきちんと記すことを義務づけるべきだろう。今の会計はあまりにもおおざっぱすぎる。株主にとっても不利益だ。ひどすぎ。
( ※ 経理がこういうデタラメな状況だから、東芝やオリンパスの不正会計が成立する。もはや先進国とは言えない状況だ。アフリカの途上国みたい。)
 
posted by 管理人 at 23:59| Comment(2) |  震災(東北・熊本) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
政府は国民総背番号制度の必要性をタックスヘイブンと上手に関連付けながら解説すればいいのにね。
Posted by 匿名 at 2016年05月15日 08:58
 最後に [ 付記3 ] を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2016年05月15日 09:12
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