高額な海外出張費や、公用車での別荘通い。そして今度は政治資金の私的流用だ。

 次々と浮かぶ問題から露呈したのは、市民感覚からかけ離れた舛添要一・東京都知事の公私混同ぶりと、公金を使うことへの鈍感さだ。これが都政のトップの感覚なのかとあきれる。

 おとといの会見で舛添氏は、私的な支出を旧資金管理団体の政治資金収支報告書に計上していたことを認め、謝罪した。

 知事就任前の2013年と14年に千葉県のホテルで開いた会議費約37万円は、実際は家族4人の宿泊費だった。いずれも正月に訪れ、プールも利用した。

 舛添氏の説明では、宿泊の間に衆院選や都知事選について事務所関係者と会議したので政治活動にあたるが、「誤解を招いた」ので返金するという。

 見苦しい言い訳だ。本人分だけならまだしも、家族の宿泊費までも政治活動費と称するのは強弁がすぎる。家族との旅行先でビジネスマンが緊急の仕事を処理したとしても、丸抱えで出張費になるはずがない。常識の問題だ。

 説明責任も果たし切れていない。ホテルでの会議は「事務所関係者」とおこなったというが、「政治の機微に触れる」と人数さえ明らかにしなかった。本当に会議は開かれたのか。疑いは晴れていない。

 そもそも今回の調査は、週刊文春が報じた範囲の確認にとどまっている。

 舛添氏の収支報告書をめくると、ギャラリーや古美術商から「現代史資料」「フランス史資料」などを買ったケースが数多く見つかる。以前、石版画や後藤新平の掛け軸を購入したことが発覚した際は「正当な政治活動の範囲」と釈明していた。

 舛添氏は「政治活動で使う物とプライベートは分けている」と述べたが、趣味の収集に公金が使われていないのか。イタリア料理店や天ぷら屋などでの私的な飲食が、ずさんな会計処理で政治資金に紛れていたのだから、物品の購入などについても明確に説明するべきだ。

 舛添氏は会見で、政治資金の使途について今後も調査すると述べた。早急に約束を果たしてもらいたい。

 今回の一連の問題は、法律や都のルールに直ちに違反しているとまでは言えないかもしれない。しかし舛添氏が都知事に就いたのは、前任の猪瀬直樹氏が選挙資金疑惑で辞任したことを受けてだった。

 「政治とカネ」に注がれた都民の厳しい目を、いま一度肝に銘じるべきだ。