北京進出の韓国企業工場に「強制移住」の危機

市「汚染誘発182業種は移転を」
現代自など韓国企業「非常事態」

 中国・北京市で工場を稼働させていた韓国の家具メーカーA社は昨年、市政府から「粉じんを排出している」という理由で移転を求められた。「調査に何かの間違いがあるのでは」と抗議したが、結局、河北省に工場を移転させざるを得なくなった。防水加工剤として使われるエポキシ樹脂塗料のメーカー・B社や、自動車のエンジン鋳造部品を作るD社も、北京市から「移転通知」を受けて代わりとなる工場用地を探している。

 中国政府が北京の環境汚染防止のためさまざまな工場を郊外や近隣の省に移転させ、該当の韓国企業に緊張が走っている。北京市は「空気清浄行動計画」を作成、いわゆる「三高両低」工場を対象に移転するよう圧力をかけている。「三高両低」とは、「高汚染」「高エネルギー消費」「高排出」の「三高」と、「低効率」「低生産性」の「両低」分野を意味する言葉で、石油化学・化学工業・鉄鋼・建築資材・非鉄金属など182業種が該当する。

 北京市では来年までに300以上の工場を市外に移転させる方針だ。最近では現代自動車の海外工場のうち、最大規模(敷地面積327万平方メートル)の北京工場も俎上(そじょう)に載せられた。2002年に完成した北京工場には従業員約1万4000人が勤務している。年産約100万台で、全世界の現代自動車の生産量21%を担う。ところが、この北京工場が「移転対象」に含まれているという見方が現地の協力企業を中心に広がっている。

 現代自では否定しているが、北京駐在の政府機関関係者は「移転問題が話し合われていると聞いた」と語った。北京だけでなく上海や南京、甘粛省など中国国内のほかの大都市でも工場移転要求が強まっている。中国政府は今年から環境汚染物質の排出総量上限と許可範囲を強化、基準に達しない場合は工場の設立を許可しないか、または最高100万元(約1700万円)の罰金を科す。状況に応じて、操業停止や廃業などの強硬策も実施している。大韓貿易協会は「北京をはじめとする中国の大都市にある韓国企業の工場に対し、移転要求が今後さらに強まるだろう」と予想した。

 錦湖タイヤは昨年7月、20年前に建てられた江蘇省・南京工場の移転作業を開始した。南京市が都心環境改善を理由に移転を要求したからだ。錦湖タイヤは2011年から4年間、市政府と交渉を行い、用地選定や移転補償金の受け取りについて合意し、市中心部から30キロメートル離れた浦口経済開発区に新工場用地を確保した。上海市は今年のディズニーランド・オープンを前に、近隣の153工場を移転させた。甘粛省は昨年8月、病院・学校・老人福祉施設など人口密集施設に近い工場2200カ所に対する危害の有無を調査、大規模な移転を推進している。

 貿易協会北京支部のチェ・ヨンミン支部長は「被害を最小限に抑えるには、大使館(総領事館)に助けを求めるか、専門家の助言を得て地方政府と交渉、できるだけ多くの補償を引き出せるようにすることだ」と語った。

李衛裁(イ・ウィジェ)記者
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