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平均契約数が約2倍に ゆとり部下でも的確に“ほめる方法”〈週刊朝日〉

dot. 5月13日(金)11時30分配信

 ゴールデンウィークが明けたころから、心の不調を訴える人が多くなる。そんな部下をつい叱咤激励したくなる上司も多いだろうが、“言い方”ひとつでやる気を引き出し、職場も活気づくという。そんな“魔法の言葉”をマネジメントのプロたちに聞いた。

 人材不足で悩む中小企業のなかでは、忙しさのあまり従業員同士、コミュニケーションすらままならないことがある。通所介護(デイサービス)のコンパス北大宮(さいたま市北区)などを運営するリハプライムでは約60人のスタッフが常日頃、顔が見えなくても気持ちが伝わる仕事ができるようにと、感謝の気持ちを伝え合う、ネット上の掲示板「イイネBANK」を立ち上げた。掲示板には「ありがとう」など「ほめる」言葉があふれている。

 さらには、新入社員に対して周りの先輩スタッフが、長所や価値を見つけて伝える「ありがとうシート」を導入している。「ありがとうシート」を受け取った新入社員は、シートに書かれた言葉を見て自信をつけることができるという。同社の小池修社長が「ダメ出し」から「ほめる」ようになったのは、一般社団法人「日本ほめる達人協会」(大阪市西区)の「ほめ達!」検定3級を取得してから。

 このように「ほめる」ことを導入する企業が相次ぎ、毎年、ほめ達を研修として採用する企業・団体は現在100社にのぼるという。

 全国で最も人口の少ない鳥取県の県庁では、少ない財政で高いサービスを提供するために、昨年「ほめ達!」検定を活用した「認め合いマスター」をすべての部署に設置することを決めた。

 なぜ、「ほめる」ことがいいのか。『繁盛店の「ほめる」仕組み』(同文舘出版)の著者で、同協会理事長の西村貴好氏が言う。

「『部下をほめたいが、ほめるところが見つからない』という声を聞きますが、例えば、小さな頼みごとをお願いしてクリアしてくれたらほめる、という方法でもいいのでやってみてほしい。人はほめられると『自分は役に立っている』という気持ちが生まれ、労力を惜しまず会社や社会に貢献しようとします。若い人に自信がついたら、やる気に火をつけることができる。そうして組織が活性化し、会社の業績がアップするケースもあります」

 特に、サービス業では効果は顕著に表れる。

 焼き鳥居酒屋「鳥貴族」をフランチャイズチェーン展開している「ダンク」(大阪市北区)では、2008年から半年に一度、最も成長したスタッフを表彰している。

 08年に最優秀賞を受賞した女性スタッフは、もともと人一倍仕事が遅くて、リストラ候補のひとりだった。しかし、覆面調査で彼女の仕事ぶりは人が見ていないところで手を抜かない丁寧な“おもてなし”であることがわかり、それが評価された。店長は女性を、店のスタッフを指導する教育係に抜擢。すると、“おもてなし”が浸透し、3カ月で売り上げを161%伸ばすことができたという。また、住友生命では12年に、「ほめ方」の研修を受けた管理職が、積極的に部下をほめることで、1人当たりの月間平均契約件数が1.97件から3.54件に増加。

「ほめることがないというときでもエピソードで思い出す。『あのとき一生懸命頑張ってくれた』『ありがたかった』というエピソードをひとつでも思い出せばほめられます」(西村氏)

 やる気にスイッチを入れられればいいが、それ以前に「ゆとり世代」とどう向き合ったらいいのか悩む管理職が多いという。

 一般社団法人日本アンガーマネジメント協会(東京都港区)が、昨年3月、全国の社会人の男女約400人を対象に「社会人の『怒り』に関するアンケート調査」を実施したところ、新入社員に対して、最も怒りを覚えた行為は「勤務態度」(81.4%)。やる気が感じられなかったり、間違えても「すみません」の一言もない。遅刻はする、出社しても「おはようございます」の挨拶がない、タメ口で会話をしてくる等々──。

「40代半ば以降の管理職世代と、20代との間は大きな“断絶”があります。仕事を円滑に進めるためにも、断絶を克服しなければなりません」

 こう語るのは、『怒りに負ける人 怒りを生かす人』(朝日新聞出版)の著者で、同協会代表理事の安藤俊介氏。管理職世代は、昭和の働き方を知っているので、上司が飲みに誘えば従うのが当たり前。厳しい上下関係のなかで、ときには「ばかやろう!」と怒鳴られながら仕事を覚えてきた。

 ところが今の20代は、生活環境や価値観からして違う。飲みに誘っても「今日は用がありますので」と断ってくる。SNSで休むことを伝えてくるなど常識外れのこともお構いなし。かつて自分が上司に怒られたときのように部下に接したくても、「叱れない」「どう接したらいいのかわからない」という人が増えているそうだ。

「怒ることで人間関係を悪くしたくない。また、最近は叱ったことで『パワハラ』と訴えられるケースもあります。しかし、仕事中には注意しなければならない場面があります。自分のなかに『怒り』をため込みすぎるとメンタルの不調にもつながるので、注意が必要です」(安藤氏)

 そんなとき役に立つのが、「イライラワードを言い換える」ワザ。

「感情のおもむくままにイライラワードを言ってはいけません。同じ内容でも、言い換えて伝えたほうが相手の心に届きますし、“断絶”を解消することができます」(安藤氏)

※週刊朝日 2016年5月20日号より抜粋

最終更新:5月13日(金)11時46分

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