定年後も正社員と同一賃金の支払い命じる 東京地裁

定年後も正社員と同一賃金の支払い命じる 東京地裁
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定年後に嘱託社員として再雇用されたトラックの運転手が、待遇が不当だと訴えた裁判で、東京地方裁判所は「正社員と同一の仕事なのに賃金に差があるのは違法だ」として、会社に対して正社員と同じ賃金の支払いを命じる判決を言い渡しました。
横浜市に本社がある「長澤運輸」を定年退職したあと後、嘱託社員として再雇用されたトラックの運転手の男性3人は、「賃金を3割前後も下げられた」として会社に対して裁判を起こしました。会社側は「定年後も同じ賃金で再雇用する義務はない」などと反論していました。
13日の判決で東京地方裁判所の佐々木宗啓裁判長は、「仕事の内容は正社員と同一と認められ、賃金に差があるのは違法だ」と指摘しました。そのうえで、「雇用の確保のため企業が賃金を引き下げること自体には合理性があるが、財務状況などから今回はその必要性はない」として、会社に対して正社員と同じ賃金の支払いを命じる判決を言い渡しました。
3人の弁護団は、運送業界では同じような形で再雇用している会社が少なくないとしたうえで、「格差の是正に向けて大きな影響力を持つ画期的な判決だ」と評価しています。原告の1人で東京の鈴木三成さん(62)は「同じような立場の人たちと格差の是正に向けて頑張っていきたい」と話しています。
一方、長澤運輸は「判決についてはコメントしない」としています。

専門家「嘱託と正社員の賃金格差は不合理 画期的判断」

今回の判決について、労働問題に詳しい東洋大学法学部の鎌田耕一教授は、「再雇用制度で嘱託で採用された人にとって職務内容が同一であれば正社員との間に賃金格差があるのは不合理であると示された点は画期的だ。たとえ嘱託であっても職務内容、働き方が同じであれば正社員と賃金を同じにすべきという判断になり極めて影響が大きいと考える。ただ、今回は仕事内容が変わらないトラック運転手という特殊な点があり、今後ほかの仕事にも広がるのか注目したい」と話しています。