東愛知新聞義援金不正流用疑惑 告発者が語る/新社長就任1カ月「真相」いまだやぶの中
2016/05/09
東愛知新聞社(豊橋市)が被災地への寄付を名目に協賛企業から集めた広告掲載料を、全額社内の収益に流用していた疑惑が明るみになって、半年が過ぎようとしている。そして、その責任をとる形で藤村正人社長(当時)が辞任し、本多亮氏が新社長に就いてから1カ月以上たった。しかし同社は、疑惑について詳しい経緯を明らかにせず、いまだに「経理ミス」としてしか説明していない。真相がうやむやになりそうな中、疑惑報道のきっかけとなる「告発」を行った、東愛知新聞社の元社員Aさん(65)が「真実を伝えたい」と、その真相を記者の前で語った。
2001年に東愛知新聞社に入社したAさんは、15年間営業局員として広告営業に携わり、今年1月25日付で同社を退職した。
11年3月の東日本大震災発生直後には、同社の「復興支援特集」が話し合われた営業会議に出席。それから4年間、年2回の同特集記事の度に地元企業を回り、協賛を集めてきた。昨年9月には、寄付が行われていない事実を知ると藤村社長と直接会い、社長が「寄付していないのは、先代(圭吾)社長から聞いてた」と言うのを聞いた。
藤村氏から直接、不正流用の事実を聞いていたAさんは、「経理ミス」と釈明する同社を「寄付するつもりもないのに、地元企業をだまして協賛を集めてきた」と糾弾する。
昨年秋からは真相を「告発」する手紙をマスコミ各社に送り続け、昨年12月に各紙が疑惑を報道するきっかけを作った。年が明け、東愛知新聞社は日本新聞協会から「会員資格停止12カ月」の処分を受け、藤村正人社長が辞任。4月から、取締役相談役だった本多氏が新しい社長に就いた。
しかし、「東愛知は今でも『経理ミス』と言い逃れをして、正人社長が会社を去った後も、会社幹部は事実を隠蔽(いんぺい)し続けている。現幹部は、正人社長を追い出したので『これですべてを終わりにしたい』と考えている」と訴えるAさん。
「東愛知はいつまでたっても本当のことを言わない。それなら自分で真実を話す」と、告発の動機を語る。
3月14日に開かれた新社長発表の会見で、本多社長は疑惑について、第三者の参加も念頭においた詳しい調査とその公表を約束した。しかしその後、調査方法や公表時期について何も示していない。
いまだ真相が明らかにされないままの疑惑。その経緯と背景に迫るため、東日新聞はAさんへの取材などをもとに、「告発」~東愛知新聞義援金不正流用疑惑~を連載します。