熊本地震から1カ月。おさまらぬ余震に不安をかき立てられながら、熊本県内では、いまだに1万人を超す人たちが避難所暮らしを続けている。

 避難所ではこの間、段ボールで間仕切りを設けたり、看護師を24時間態勢で配置したりと、生活環境の改善に向けた努力が重ねられてきた。

 だが、それはあくまでも応急の対策だ。住民の健康を守り、復旧・復興という次のステップに踏み出すためにも、県や地元自治体は被災者の住まいを確保し、避難所暮らしを解消させることが急務だ。

 その際に大切なことは「被災といえばプレハブ仮設の建設」という先入観を捨てることだ。

 内閣府は、東日本大震災を経てまとめたマニュアルで、民間の賃貸アパートなどを行政が借りて被災者に提供する「みなし仮設」の活用をうたっている。

 被災地の親しい住民同士のつながりをどう維持するかといった課題はあるが、すぐに入居でき、コストも低く抑えられる利点がある。

 熊本県でもみなし仮設の相談窓口は開かれているが、申し込みは数十件にとどまる。

 最大の理由は、入居に必要な罹災(りさい)証明書の発行の遅れだ。自宅が全壊か大規模半壊かに判定される必要があるが、自治体の人手不足で間に合わない。

 緊急時である以上、すでに行っている被災宅地危険度判定士の調査を援用するなど、臨機応変な対応ができないものか。

 会計検査院は12年、みなし仮設の家賃を現金支給することも提言した。賃貸契約に絡む行政事務が減り、入居待ちの時間も短縮できる。その適用を国は検討すべきだ。

 熊本県では震度7が2度も起きたこともあり、震災2週間後にようやく仮設住宅の建設が始まった。これまでに約1千戸分に着手したが、その分でさえ、入居できるのは早くても6月中旬だという。そもそも、全体でどれだけの仮設建設が必要なのかも、はっきりしていない。

 全体の見通しを示すことは、被災者の生活再建に欠かせない。東日本大震災では、さみだれで仮設住宅が提供された結果、応募が殺到し、一つの団地にさまざまな地区の住人が入り交じった地域もあった。コミュニティーづくりが難しくなり、復興の歩みがにぶる。

 熊本は梅雨入りを間近に控えている。全国の自治体職員がすでに応援に入っているが、必要ならばさらに支援を仰ぎ、国も関与しながら用地確保や住民ニーズの把握を急いでほしい。