2015/16シーズンの優勝を果たしたレスターだが、彼らの優勝した理由が語られる際、メンバーを固定し戦い続けることができたから、というものがある。彼らは最も選手変更が少なく、最も負傷者が少なかったチームなのだ。
レスターの特徴というと、カウンタースタイルであること、そしてそこから多くのチャンスと得点を決めてきたことである。守備から攻撃へ素早く切り替え、更に長い距離を全力で走るスプリント力が選手達には求められる。相当な消耗となるスタイルであり、負傷も付きもののように思える。
その理由はスタッフにある、スカウト陣が優秀だと語られることの多いレスターのバックルームスタッフであるが、メディカルチームやスポーツサイエンスチームは彼ら以上に支えたと言っても過言ではないかもしれない、以下に今シーズンどういった取り組みを行ってきたのか紹介していきたい。
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ハムストリングを強化
彼らはカウンタースタイル上必須となるスプリントに耐えられる身体作りを徹底的に選手達に行わせた。
そのためには、爆発力を補うハムストリングを鍛えることが重要となった。350〜500kgを持ち上げることができるプレス装置を使用したのだが、その代表的な装置の1つがノードボードだ、これはハムストリングの強度を測定し、強化させることも可能としていた。試合後のドレッシングルームでのエクササイズでさえ使用されるほど、愛用されハムストリングを強靭にしていったのだ。
そして同時に40mのスプリント測定を通常木曜日のトレーニング後に行う。疲労している可能性もあり、負傷に繋がりそうにも思えるが、こういった追い込まれた状況でないと選手は全力を出さないと、ストリンクス・コンディショニングコーチである、M・リーヴスは語る。
GPSデータは選手達がかなり周囲の状況に影響されることを証明した。CBを例とすると、追い込まれた状況であれば、ボールを必死に追った際にスプリントは行われるかもしれないが、そういった状況でない場合スプリントの数値は芳しいものではなかった
その時の最大限の力を振り絞った数値でなければ、コンディションを管理する側の取り組みも中途半端となってしまう。それにより、日々の試合の中での負傷と、軟部組織(おもに筋肉、脂肪組織、皮下、結合組織、末梢神経など、このスポーツで重要な靭帯や腱も含まれる)の不足による負傷を招いてしまう。
スプリント測定が終われば、選手達にはビートルートジュースが配られる。これはスプリントパフォーマンスとプレイの決断力のスピードを上げる効果が望めると、エクセター大学の研究結果から飲用するようになった飲み物だ。3.5%向上とあまり高いとは言えない効果だが、今シーズンの選手達のパフォーマンスに若干でも関与している可能性は高い。
選手のコンディションを徹底的に管理
有名な話、レスターのスケジュールを見ると週に2度の休養日が設定されてある。土曜日に試合が会った場合のスケジュールはこうだ。日曜日は完全休暇、月曜日は軽いトレーニングを行い、火曜日に激しいトレーニングを行う。水曜日は休暇日、そして木曜日にも激しいトレーニングを行い、金曜日に試合に向けたトレーニングを行う、といった感じだ。
当然ながら週に2日休養日を設けられていることで、負傷のリスクも減る。ラニエリも”イングランドでの試合は常に激しさを伴い、全員ヘトヘトになってしまう。彼らにはもっと回復する時間が必要”と語った上で、このスケジュールが結果に直結していると認めている。
そしてトレーニング中は全てが監視されている。カタパルトGPSベストを通して記録され、セッションに合わせてピッチの範囲を適応させるため、ピッチの選手密度が濃すぎないか薄すぎないかさえも見られている。選手達の走行距離数と激しさ、加速度、減速度や動く方向を変えたことも確認されている。そうして監視している中、激しくトレーニングしすぎた選手達がいれば、いくつかのトレーニングセッションから外す必要が出てくる。良いデータを使うことによって、選手達のコンディションを管理していける。特にハイプレスを仕掛けるプレイをする選手達であれば特にだと、データの重要性をリーヴスは触れている。
このデータに加え、選手達はトレーニングが終わった後iPadを使用して、現在の状態はどうかを電子質問表に記入していく。もしどこかにに少しの痛みがあるという訴えがいくつか出たとすれば、同様の問題を回避するために、次回のセッションで問題箇所を修正できるのだ。
代えの効かない選手には手厚いケアを
ヴァーディは今シーズン目覚ましい結果を出しているが、その中でも記憶に残るのは11試合連続得点記録だ。しかし彼は手首の骨折などシーズン中から怪我に見舞われ続けていた。特にその最中である11月にも臀部を負傷していた。その際に日本でも冷凍療法を利用していたことは報道されているが、彼はそれ以外にもメディカルチームやスポーツサイエンスチームから手厚いケアを受けていたのだ。
レスターは試合後に筋肉の回復をサポートするためにはロイシンや抗酸化物質を摂取することが必要となるため、チェリーアクティブ(抗酸化物質が多く含まれている健康食品、23このフルーツと野菜を摂取するだけの抗酸化物質を摂取できる)を含むリカバリーパックを選手達に配布している。その間にヴァーディには試合後すぐに栄養価の高い食事と、ミルク、プロテインサプリメントを摂取させることに集中させた。
それに加えて行ったのが日本でも報道された冷凍療法だ。ただし、冷凍療法は既に昨シーズンから続けられているケアであり、今シーズンから始めたというわけではない。この療法が効果を発揮したのが昨シーズン終盤の連勝時だ。試合直後にグラウンド横に設置されてある冷凍室へ入り、素早く身体の回復を図ったことで、完全に次の試合に向けてフィットすることが出来たと、昨シーズン終盤時ヴァーディは語っている。
レスターの冷凍療法を受ける際の行程はこうだ。冷凍室へ入ると、まず-60℃の部屋で30秒ほどいることになる、その後更に奥に小さな部屋があり、そこで-135℃の中で2〜4分間過ごすという行程を繰り返す。
冷凍室は冷凍風呂と似た働きがある。血管が刺激され収縮し、心臓へ血液を戻す。それにより血行運動が促進する、それは身体全体に効果的だ。ヘッドフィジオのD・レニーは、試合の間隔が短い時であれば特に効果を発揮すると語っている。思い起こせば12月の詰められたスケジュールの中での強豪との連戦時、敗戦が重なるだろうと予想されたものの、結果的にリヴァプール相手の敗戦のみで切り抜けた。
ただ、-135℃ということで驚かれる方もいるかもしれないが、レスターでの冷凍室はドライアイスが使用されているから、冷凍風呂ほど皮膚に冷たさを感じず、レニーによれば爽快感すら感じる選手達がいるようだ。それに冷凍室へ入った後の晩と、翌晩はよく眠れる波及効果もある、と語っている。それだけでなく、マッサージに氷嚢を使うことによって、回復過程のスピードアップを図ろうとも取り組んでいる。これも部分的ではあるが、血行促進効果があり、回復効果がある方法のようだ。
試合直後に栄養価の高い食物を摂取し、冷凍療法により身体の早期回復を図る。これが11試合連続得点を果たした裏側で行われていたことだ。昨シーズンは痛み止めを打ちながらプレイし、今シーズン終了後にはEuroも待っている。ヴァーディが休暇から帰ってくれば、これと同様の、もしくはこれ以上のケアが提供される可能性もある。
あらゆる試みを行って、少しでも良い状態で選手達をフィールドへ送り込め
こういったアプローチをレスターのメディカルチームやスポーツサイエンスチームはこれまで行ってきた。ただ、忘れてはならないのが全体的なアプローチが重要だという点だ。精度の高い良質なデータを取れた際、時折選手達の意見よりもデータを信用しすぎてしまうとリーヴスは語っている。1人1人の選手の理解を深めていくことが鍵を握る、だからこそ選手との協力関係をしっかり築くことが成功に近づく要因だと日頃彼らは心にして仕事に取り組んでいる。
そして一見効果の薄そうなビートルートジュースや氷嚢でのマッサージ等も積極的にスタッフは取り入れ実践している、その背景には現在のバックルームスタッフを集めた前監督ピアソンの存在があった。
私達の取り組みの効果を数値で顕すのは難しいが、僅かな差はあるだろう。もし0.5%、それか1%でも、試合に向けていい準備ができる方法を見つけることができたとしたら、私達はそれに取り組むだろう。気休めの努力かもしれない、だがそれは本当の問題ではない。これは自分達にとって正しいと思うことを取り組むことで、できるだけ多くの選手達をフィールドへ送り出せる可能性を得るためなんだ
あらゆる試みを行うことで、選手達をより良い状態でフィールドへ送り込む。その試みが今シーズン間違いなく実を結んだ。レスターのメディカル・スポーツサイエンスチームも選手達のように必死に戦い続けたことが、全体を押し上げ成功へ導いたのだ。
はじめまして!
岡崎慎司選手の自称熱狂的ファンのささどんと申します。
昨シーズンまではレスターシティの存在すら知らなかったのですが岡ちゃんがレスターに移籍してからレスターファンになりました。レスターの試合は今シーズンの第1節から見ていましたがまさかこのような奇跡的で感動的な物語を見れるとは・・・!本当に驚いています。
語学力がない僕にとってFoxes15さんのツイッターは神様の様な存在でした!そしてブログも新たに開設されていたので見ていましたがとても内容の濃い素晴らしいブログだと思います。
特に今回の記事は興味深い記事でした!
レスターの冷凍療法は日本のメディアの記事で読んだ事がありましたがトレーニングの方法やメディカルパックやビートルートジュース等の栄養素の補給等の話は初めて聞きました。レスターシティの躍進の秘密を垣間見る事が出来たような気がします。優勝は選手達や監督の力だけでなく、全てのスタッフの努力の賜物という事を改めて感じさせられました!
チームの強さを図るうえでがどの選手を獲得するかという事に注目が置かれる中、このような記事は個人的にはものすごく大好きな記事です。ありがとうございました!
ご相談が一つあります。実は僕も「熱狂的岡崎ファンの私設応援団」というブログを立ち上げております。ロシアワールドカップまでの期間限定で岡ちゃんを応援するために更新を行っています。つきましてはFoxes15さんのブログをご紹介させていただきたいと考えているのですが宜しいでしょうか?
これからもFoxes15さんのブログとツイッターを楽しみにしています!
ささどんさん、コメントありがとうございます。まだまだ私自身英語に関して成長すべきところが多いと思うので、自己研磨して行きたいと思います。
紹介ですか、していただけるならありがたいです。実は私もささどんさんのブログを拝見したことがありまして、有志ツイートのリンク…自分だなと思っていました笑。
熱い思いで応援し続けてくれたことは、ブログを見れば一目瞭然です。これからも岡崎並びにレスターを応援してくれると嬉しいです。
ありがとうございます!
早速僕のブログでFoxes15さんのブログをご紹介させていただきたいます(^◇^)
Foxes15さんのツイッターの方は実は既に紹介させていただいておりリンクを貼らせて頂いておりました(^人^)
もちろんこれからも岡ちゃんとレスターを全力で応援する所存です(`・ω・´)ゞ