こんにちは、錠前(@jomae_yasushi)です。
「目が疲れる」を理由に長らく電子書籍を避けてきたのですが、際限なく増える本の山を前にいつまでもそう言ってはいられず、先般ついに電子書籍への移行を決行しました。
3か月ほどあらゆるジャンルの書籍で電子版を試してみて自分の中での結論めいたものが見えてきたので、頭の整理がてらこの記事にまとめます。
電子書籍に興味はあるものの移行をためらっている人、電子書籍リーダーを買ったばかりの初心者、すでに試用してみたけど合わなかったと電子書籍から離れてしまった人などに、こういう使い分けをすると便利だよ!という提案ができればと思います。
メリット・デメリットを網羅的に列挙した記事はたくさんあるようなので、この記事では特に重要なメリット・デメリットのみをピックアップするとともに、コンテンツの種類に合わせたデバイスの選び方をメインに書いていこうと思います。
電子書籍、紙の本のメリット/デメリット
電子書籍のメリット
保存に場所をとらない
データ化されたコンテンツは紙の本のように物理的な質量がないため、保存のための空間が必要ありません。全てのデータはサーバー上に保管され、私たちは必要なときそこにアクセスし、データをダウンロードすればコンテンツを楽しむことができます。またどんなに長期間保存しても、劣化しません。
携行性が高い
書籍データをダウンロードしたデバイス1つを持ち歩けば、それは自分の本棚を持ち歩いていることと同義です。引っ越し時、大量の蔵書に頭を抱えることもなくなります。
上記2つのメリットは、電子書籍と聞いて誰でもすぐに思いつくシンプルなものです。当たり前すぎて言葉にすると陳腐ですが、コンテンツを電子化したことによる最大の利点だと思います。
電子書籍のデメリット
一覧性が低い
電子書籍では、今現在開いているページの情報しか目にすることができません。言い換えるなら、開いていない膨大なページの存在を感じることが難しいのです。
書籍内での位置情報を表示し全体像を見渡せるようになってはいるものの、紙の本のように物理的にそれを感じることは難しいですし、好きなページに飛ぶには少々手間がかかります。
そのため、どこか全容を把握しきれないような気持ち悪さは拭いきれません。紙の本の高い一覧性、いつでも手軽にザッピング*1できる利便性は失われています。
体験としての貧困さ
電子書籍では、読書体験の一部分がすっかり削ぎ落とされています。
紙の本では、まず目に付く表紙のデザイン、質感、手ざわりなどを感じることができますし、ハードカバーの重厚さは、時に読書体験を特別なものにしてくれます。判型*2の違いによっても、受ける印象は大きく異なります。
また本文に使われる紙の種類によって変化する手に取ったときの重み、ページをめくる際の手触りや質感、紙色とインクとのコントラストなども感じられますし、本を開くと飛び込んでくる版面*3の範囲(上下左右の余白の取り方)、文字サイズ、フォント、行送り、文字送り等々、紙の本では五感をフルに使って「読書」という体験ができるわけです。
無数にある選択肢の中から、ユーザビリティとデザイン性の狭間で絶妙な舵取りをこなしつつ作り手が最適だと判断し選び抜いた結果が紙の書籍には確かに落とし込まれていて、その過程に思いを馳せるのは私にとって書籍選び、購入の醍醐味の一つです。
ところが電子書籍では、こうした無限に広がる可能性が1つの画一的なフォーマットに収斂されその広がりを失ってしまいます。デバイスの画面サイズやテクスチャはあらかじめ決まっていて、デバイスを選択した時点でそれらは不変のものとなります。またリフロー型*4の電子書籍では文字サイズやフォント、版面の設定といったフォーマット選択はユーザーに委ねられていて、そこに作り手が介入する余地はありません。
電子書籍の購入は生のコンテンツそのものを手に入れるということで、パッケージされた商品としての書籍を購入することから色々なものが削ぎ落とされていて、購入、それに続く読書を含めて趣きの異なる体験なのだと思います。これまで書籍のコンテンツとしての側面のみを重視していた人にとって電子書籍は抵抗なくすんなり受け入れることができる利器であるのに対し、書籍のパッケージ性にも相応の重みを置いてきた人間にとっての電子書籍は、体験として味気なく物足りないものであると言わざるを得ないでしょう。
紙の本のメリット/デメリット
なお紙の本のメリット・デメリットは電子書籍のそれとオモテウラの関係にあります。つまり、紙の本のメリットは一覧性が高いこと、五感をフルに稼働させられる体験の豊かさにあるし、デメリットは嵩張ることや持ち運びに不便なことなどです。
電子書籍を読むためのデバイス
電子書籍を読むためのデバイスの種類と、それぞれの特徴をまとめます。
タブレット
タブレットとは、板状のオールインワン・コンピュータやコンピュータ周辺機器に与えられるカテゴリー名称(タブレット (コンピュータ) - Wikipediaより)です。スマートフォンが巨大化したとも、PCが板状になったとも言えます。スマートフォンとPCの中間のような存在ですね。
タブレット端末は搭載するOSによって大きく3つに分けられ、iOS を搭載したもの(iPad)、Android を搭載したもの(ZenPad など)、Windows を搭載したもの(Surface など)があります。デバイス選択の幅が広いですが、個人的なおすすめは下記の iPad mini か ZenPad です。
特徴は以下の通り。
- カラー表示
- 操作性がよい(電子書籍リーダーに比較して)
- 屋外での視認性が低い(直射日光下で見づらい)
- 読書以外の機能も充実している
- 端末は比較的高価格
電子書籍リーダー(電子ペーパー端末)
電子ペーパーとは、紙の長所とされる視認性や携帯性を保った表示媒体のうち、表示内容を電気的に書き換えられるものをいいます(電子ペーパー - Wikipediaより)。それを実用化したのが電子書籍リーダーです。
選択肢はほとんどなく、実質 Amazon の Kindle か、楽天の Kobo の2択です。
特徴は以下の通り。
- モノクロ表示
- 消費電力が少ない(電池の持ちがいい)
- 視認性が高い(紙と同じ反射光を利用した表示で、直射日光下でも見やすい)
- 電子インクを用いるため、一定間隔でページリフレッシュが必要(ページ遷移時に一瞬白黒が逆転しますが、慣れるとさほど気にならないです)
- 端末は比較的安価
スマートフォン
スマートフォンでも電子書籍を読むことは可能ですが、画面が小さいため読書に適しているとは言い難いです。リフロー型のテキストコンテンツならまだしも、コミックは拡大・縮小を繰り返さねばならず、使い勝手は悪いでしょう。
PC(パソコン)
PCでも電子書籍を読むことは可能ですが、上記3つのデバイスほど読書時の体位の自由度が高くないこと、画面が広すぎること、持ち運びが不便なことなどから、読書には適さないでしょう。
というわけで、タブレット or 電子ペーパー or 紙のいずれかを用いて読書することを前提に、コンテンツの種類ごとのおすすめデバイスを以下に紹介していきます。
コンテンツの種類ごとのおすすめデバイス
小説・エッセイ:電子(電子書籍リーダー)
小説・エッセイなど、活字が中心でかつ読み返すことの少ないジャンル(当記事での「読み返す」は、読み進めながら前のページを参照することを指す)
これは電子ペーパーの Kindle や Kobo 一択ですね。
ハイライトを引いたりメモをとったりしないのでデバイスの操作性はそこまで高くなくていいし、カラーである必要も特にないので、電子書籍リーダーが活きます。
ビジネス書・実用書:電子(タブレット or 電子書籍リーダー)
ビジネス書については迷いどころです。
活字がメインなので電子書籍リーダーでもOKなのですが、ハイライトやメモを多用して読後に復習することを考えると、タブレットの方が便利です。好みだと思います。私は電子ペーパーで読んで、ハイライトやメモの一覧を見返すときだけタブレットを使っています。
ハイライトの一覧を見返す際は、Amazon の Your Highlights というサービスがおすすめ。コピペが可能なので、引用しながら資料をまとめたり書評を書いたりする際に大活躍します。
図表が多く含まれていたり読み返しが多くなりそうなビジネス書の場合は、紙で読むのもアリだと思います。
漫画:電子(タブレット)
漫画はかさばる & 読み返しが少ないので、圧倒的に電子向きです。電子だと数十巻に及ぶシリーズの全巻買いも楽々です。
しかし1ページ当たりの情報量が多く、作品によってはカラーページも含まれることから、電子書籍リーダーは不向きです。
ゆえに、デバイスは必然的にタブレット一択となります。
迷うのは画面サイズですが、8インチを推したいです。
基本は縦持ち単ページで読み進めて、見開きページのみ横持ちにする使い方でOK。セリフの文字サイズが小さすぎない漫画なら、常に横持ち見開きで読み進めることも可能です。
10インチ以上あればどんな漫画でも常に見開きで読めますが、デバイス本体が重くて長時間の保持および携帯には向かないです。
電子漫画の難点を挙げるなら、描線の美しさなど、ディテールが損なわれることでしょうか。ペンタッチを含めた画風が好みの作家さんの漫画に関しては、紙で購入するのもいいかもしれません。
参考書、資料性の高い本:紙
資格試験の勉強などに使う本に関しては、一覧性の高さ、ザッピングのしやすさが重要なので紙がおすすめです。
資料として、必要なページのみをぱらぱら確認したいような書籍も、紙がおすすめと言えるでしょう。例えば『新訂 官職要解 (講談社学術文庫)』なんかは電子で使えと言われたら、ちょっとゾッとしてしまいます。
電子書籍ストアはどこがいい?
デバイスから話は逸れてしまいますが、電子書籍ストアについても少し書いておきます。
電子書籍を販売しているストアは数多くありますが、ストア選択は慎重に行いたいです。
電子書籍の購入とはすなわち、コンテンツの非独占的な使用権の購入のこと。つまり、購入したコンテンツデータの所有権は購入者にはなく、万が一ストアがサービスを停止した際には手元に何も残らない、ということになります。
品揃えやサービス継続性への信頼を考えると、最大手・Amazon の Kindle 一択かと思いますが、私は漫画のみ eBookJapan で、それ以外の書籍は Amazon で購入してます。あえて新規にクレジットカード情報を登録してまで Amazon 以外のサービスを使っているのは、ビジネス書や小説、エッセイなどのテキストコンテンツと漫画とを完全に分けて管理したかったからです。
数ある電子漫画配信サービスの中から eBookJapan を選んだ理由は大きく二つあって、一つは漫画の品揃えです。eBookJapan はマイナーな過去作品を含めた電子化を精力的に行なっており、漫画作品の品揃えでは国内最高峰です。また画質の良さも言われていますね(正直な話、私の肉眼では Kindle との違いはよくわからないです。比較記事が散見されますが、数作品の比較だけでは何とも言えないです)
もう一つの理由は、eBookJapan のサービス継続性への信頼の高さです。2012年、eBookJapan は、サービス終了が発表された楽天の電子書籍サービス「Raboo」の利用者を対象に、Raboo での電子書籍購入代金相当分のポイントを最大5000円分まで提供する「電子書籍お助けサービス」を打ち出しました。eBookJapan 代表取締役社長の小出斉氏は次のようなコメントを述べています。
「著者や出版社が電子書籍に対して積極的になり、優れた端末も次々と発売されて、電子書籍業界が飛躍する条件が整いつつあるというのに、電子書店が閉じると購入した電子書籍が読めなくなるのでは、その勢いが削がれてしまいます。業界の信頼を失墜させてはならないとの思いで、当社がサポートすることといたしました」
Raboo から溢れた購買層を囲い込む戦略もあったのでしょうが、一定の信頼を寄せるに能う対応だったと思います。
また、eBookJapan は立ち読み可能ページが Kindle に比べて多量な傾向にあるので、作品の雰囲気を確認するのに便利です。その他にも、ブラウザでのストリーミングによる読書、電子本棚の背表紙表示、各種割引等々、魅力的なサービスが多いです。
おわりに
以上、電子書籍への移行を検討するにあたって、役に立ちそうな情報をまとめてみました。少しでも参考になれば幸いです。
デメリットもありますが、それを補って余りあるほど電子書籍は便利で、読書生活をガラリと変えるだけの力をもっています。紙と電子をうまく使い分ければ、快適な読書ライフを送れること間違いなしなのです。
ワンクリックで本1冊を買えちゃうので、買いすぎにはくれぐれも注意してくださいね(自戒)。
それでは今日はこのへんで。
さよ~