ペイントツール「CLIP STUDIO PAINT」などを開発しているセルシスが5月11日に公開した新サービス「IJIRO」(イジロー/関連記事)が、公開2日でサービスを停止しました。「IJIRO」公式サイトとセルシスの公式サイトでおわびのメッセージが掲載されています。
「IJIRO」は、MMD(MikuMikuDance)などのデータを「イジる」ことができるサービス。キャラクターの3Dモデルを眺めるだけでなく、「キャラクター」「背景」「モーション」「音楽」「カメラワーク」を他の投稿ユーザーのものと入れ替えて、再び作品として投稿できるというものでした。
しかしサービス開始後、MMDのモデルデータ作者などから、「IJIRO」の利用規約の不備などに関する指摘が続出。多数のモデルデータ作者などが、「IJIRO」でのデータの利用を禁止する事態に発展していました。
その結果、「IJIRO」はサービス公開2日目にしてサービスを停止することに。セルシスは今回の件について公式サイトで、「クリエイターの皆さまに安心してお使いいただくための配慮や仕組みが欠けておりました」「クリエイターの皆さまの活動を支援するべき立場の弊社が、認識不足から、このようなご迷惑やご心配をおかけする事態を招いてしまい、誠に申し訳ございません」とおわびを掲載しています。
なお、ねとらぼでは本件についてセルシスに取材を申し込んでおり、連絡がつき次第話を伺う予定です。
セルシスより、お話をうかがえました。なぜ今回の件で問題が大きくなってしまったのか、その原因について聞いてみました。
前述の通り、「IJIRO」ではMMDのデータを読み込めるように作られていましたが、データは「自分で作るか、作者から許諾をもらう」必要がありました。しかし、誰でも自由にデータを読みこませられる仕組みになっていたため、許諾を取らず、公開されているデータを勝手にアップロードしてしまう人が出る可能性があります。そのため、2次利用を禁止しているデータが、第三者の手により作者の望まない形で世に公開されてしまう可能性があり、データの作者から大きな反発を招いてしまったとのことでした。
また、「IJIRO」を使ったコンテストを開催して優秀な作品には賞金を出す予定でしたが、そのルールに「手持ちのデータを上げて」という記述がありました。これは、「ダウンロードしたデータであれば第三者が作成したものでもよい」と読み取れてしまいます。さらに、前述の通り第三者が勝手にデータをアップロードをできる仕組みだったため、他人が作ったデータを勝手に使って賞金の出るコンテストに応募できてしまうように読み取れてしまう点も、問題があったとのこと。このような仕組みについて、「クリエイターにサービスを提供するものとしてお粗末なのでは」といった声もあったそうです。
今回の件についてセルシスでは、「クリエイター向けのツールを提供する者として、クリエイターの皆さまにご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ない。真摯(しんし)受け止め、反省している」とのことです。
なお、「IJIRO」の再開の予定については現在のところはなく、事実上の「終了」となるそうです。
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