和田美樹 - 健康,食生活 10:00 PM
飲んだ夜でもきちんとした睡眠をとる方法
深酒をすると二日酔いになるのは当然ですが、飲んだ翌日のひどいだるさと疲れは、前の晩の睡眠の質が非常に悪いせいでもあるのです。たったの2、3杯のお酒で睡眠が台無しになってしまうわけですが、手立てがないわけではありません。少しも休息にならない睡眠を、少しはリフレッシュできる睡眠にする方法をご紹介しましょう。
飲みに行く前にできること
数杯のお酒を飲んですぐ寝たとき、いったん深い眠りについた後、目が覚め、眠りかけては起き...を一晩中繰り返すことはないでしょうか。それを引き起こしているのは「リバウンド効果」です。深い眠りから、目が覚めやすい浅い眠りに、常にあなたを連れ戻すのです。
睡眠障害研究センターのTimothy Roehrs氏とThomas Roth氏の説明によると、リバウンド効果は、酔って眠りに落ちた後、体内でアルコールが処理され、体が正常に戻ろうとしている証拠です。酔いで眠っている状態から、体が目覚めようとしているのです。そのため、体が環境──窓から差してくる光や、外を走る車のクラクション、わずかな温度変化などに対し、非常に敏感になります。アルコールが血流から抜けると、もっと休む必要があると感じていても、ちょっとした変化で目が覚めるようになります。ワインを数杯飲んだ翌朝、わけもなく異常に早く目が覚めてしまうのはそのためなのです。
帰宅後の睡眠環境を整えておく
寝る時間近くになって飲みに出かけたりすれば、こうした睡眠障害は避けられません。しかし、出かける前に寝る環境を整えておくことができれば、かなりの状況改善になります。まず基本から。こんなときこそ適切な睡眠衛生が大切です。遮光カーテンで部屋に入る光を遮るか、アイマスクを用意します。温度は、低めの華氏60度から68度(摂氏15.6~20度)に設定し、床に入るとき暑すぎないようにします。また、環境音を遮断するための耳栓も用意しましょう。そして、ロヨラ大学シカゴ校のアルコール研究プログラムを率いるElizabeth Kovacs 博士はこんなことも言っています。パーティーの日以前から質の良い睡眠をとっておくと、一夜の飲み会のインパクトを和らげることができるというのです。その日は、うるさく、明かりが煌々とついた工場で寝なければならないというようなつもりで、騒音や光に対する防備や事前の睡眠衛生を万全に整えましょう。
バランスのとれた食事を摂る
一口目のお酒を飲む前に、必ずきちんとしたバランスのとれた食事を摂り、アルコールの体への吸収を調整しましょう。いくらかのタンパク質、少なめの炭水化物、いくらかの脂質を含んだ、燃焼に時間がかかる食事をすれば、血流へのアルコールの吸収が遅くなり、体がオーバーワークに陥ることなくアルコールを処理することができます。Hangover Heaven(訳注:二日酔い専門サプリと点滴治療を提供する)のJason Burke医師は、赤身の肉がかなり優れたチョイスだと言います。体内でのアルコールの副産物の分解を助けるタンパク質とビタミンB群が含まれているからだそうです。
飲んでいる最中にできること
友達との外出を大いに楽しみ、数杯のお酒を飲んでいる最中の話をします。アルコールには利尿作用、つまりトイレが近くなる作用があります。つまり、飲酒によって自分自身を脱水状態にしているということです。(翌日はもちろん)家に帰ると頭痛がしたり、めまいがしたり、暑苦しくて一晩中眠れなかったりするのは、この脱水症状のせいなのです。
水をたくさん飲む
当然ながら、最善の解決策は水を飲むことです。簡単ですね。しかし、いつ、どれだけ飲むかが大事です。可能なら、お酒1杯と水グラス1杯を交互に飲んでください。これにより、飲んでいる間の脱水症状を防ぐことができるほか、水でお腹が膨れるので、アルコールを飲む量も減ります。飲酒量を減らせれば、長い目で見てもかなりのトラブルが回避できます。また、飲んでいるときはカフェインを避けることも賢明です。そう、ウォッカのレッドブル割りはやめ、アイリッシュ・コーヒーも避け、フォー・ロコもほどほどにするということです。
早めに切り上げる
最後に、睡眠を確保する必要があるとわかっている場合、何よりも賢明なのは、飲酒を早めに切り上げることです。でも、楽しいひと時を過ごしたい、パーティーの場をしらけさせたくないというのなら、早い時間(とは言っても何か食べた後)に多めに飲んで、終盤に向けて、徐々減らしていきましょう。たとえば、友達と夕食を食べてからバーに行くというような場合、ディナーでワインを数杯のみ、バーでは、1~2杯をちびちびと飲みます。お酒の種類を混ぜることに関してはあまり気にする必要はありません。昔からよく「蒸留酒、ビールの順番なら大丈夫」「ビールの後に蒸留酒を飲むと最悪」などと言われていましたが、そうしたことはだいたいが迷信です。個人の好きな組み合わせでかまいません。
できれば、帰宅して寝るときまでにアルコールがほぼ代謝されているくらい、早い時間に切り上げるのが理想です。そうすれば質の良い睡眠がとれ、翌日の二日酔いも避けられるのでしょう。これはあくまでもだいたいの推定ですが、就寝時間の少なくとも4時間前にストップするようにしたいものです。パーティーに行って、そんなに長い間ドリンク無しで過ごさなくてはならないのかと思うかもしれませんが、残りの時間は、前半で摂取したアルコールをまだ体が処理している最中なので、1~2時間は酔いを楽しめるはずです。
帰宅後にできること
酔ってわけのわからない状態でなければ、以下に挙げる寝る前のケアを実行し、朝までしっかり眠れる確率を上げましょう。
鎮痛剤に注意
じわじわとやってくる飲酒による頭痛や、二日酔いの前兆を防ぐために、家に着いたらまず、イブプロフェンを少量のみます。このとき、タイレノールなどのアセトアミノフェン系の薬は避けてください。アセトアミノフェンは、アルコールと混ざると、肝臓にダメージを与える危険があります。また、睡眠薬は、いかなる種類のものも避けます。睡眠薬を使えば、手っ取り早く眠れて体を休めることができる気がしますが、アルコールが睡眠薬の作用を増強し、呼吸を乱し、酸素摂取を一時的に止め...と、実は悪いことずくめです。朝起きた時、頭痛や、ボッーとした感じ、疲れが取れていない感じに襲われるでしょう。それも起きられればの話です。
適切なおやつ
帰った時にお腹がすいて冷蔵庫をあさらなくてすむよう、寝る前のおやつも前もって計画しておきましょう。消化不良を起こさないよう内臓にやさしいもの、寝ている間にアルコールを効率的に分解するために必要な栄養素の補給、という点を考えて選びます。野菜、くだものなど、繊維質の多い食べものなら間違いありません。繊維質の豊富な食べものは消化に時間がかかるので、アルコールの吸収と分解も遅くなります。しかし、飲んだ後の消化不良や胃の不快感がある人は、アルコールの分解が遅くなっても消化を遅くすることが大切かもしれません。
ハチミツも、飲んだ後のおやつとして信頼性の高いものです。イギリスのキール大学のDr. Richard Stephens博士は、低血糖が飲酒後の作用をさらに悪くすると説明しています。ハチミツをスプーン一杯、あるいはハチミツをトーストやバナナに塗ったものを食べれば、分解されやすい糖分が摂取でき、夜間、体内でのアルコールの分解を促進する燃料となります。寝る前に食べるなら胃にやさしい食べものにしましょう。これらは、飲んだ翌朝、血糖値が特に低くなっている時にも効果を発揮します。
体が失った栄養素を補給する
また、飲酒によって失われた栄養素を補給するために、寝る前にビタミンをのむのもお勧めです。普通の総合ビタミン剤で十分ですが、『QJM: An International Journal for Medicine』誌に掲載されている研究によると、アルコールは、体内のビタミンB群の不足を招く(アルコールの分解に使われるため)そうなので、ビタミンBのサプリがよいと思います。寝る前や翌朝に大量のサプリをのむことはありませんが、葉酸、硫酸マグネシウムも効果的なようです。
病院の救急では、急性アルコール中毒患者に、これらを配合したものを点滴するのですが、その輸液は「バナナバッグ」と呼ばれ、体内の化学物質のアンバランスを修正する役割をします。あなたも、自家配合の「バナナバッグ」サプリメント(もちろん点滴ほどの高用量ではありませんが)を準備することで、同じ目的が果たせます。
寝る前に最後の水をグラス1杯飲み、後で喉が渇いたときのため、そのグラスをまた満たしてベッドサイドに置いておきましょう。しかし、水はあまり飲みすぎないようにしてください。飲み過ぎると、夜何度もトイレに起きて、とるべき睡眠がとれなくなります。また、水の代わりに子供用の電解質補給飲料ペディアライト(Pedialyte)を飲むのも有効です。ペディアライトは、水分補給効果が高いうえ、他のスポーツドリンクのように砂糖がたくさん入っていないのです。ただしこれを飲めば脱水症状や二日酔いの可能性が一気に解消されるというものではありませんので、帰宅後(実は翌朝のほうが効果的)に飲むだけで効く魔法のドリンクとは考えないでください。脱水症状の対策は、予防が一番なのです。
最後に、携帯電話をマナーモードか機内モードにし、着信音や通知音で起きないようにします。できたら目覚ましもかけずに、朝寝坊をするつもりで寝ましょう。飲んだ後の体を休めるには普段よりも長い時間が必要です。しかしこれを読んでいるあなたはおそらく、できるだけ多くの睡眠を確保したいが、朝寝坊はできない人なのでしょう。そうであるなら、次回は、早く切り上げるようにしましょう。
Patrick Allan(原文/訳:和田美樹)