日産 三菱自を“傘下”に 株式の34%取得へ

日産 三菱自を“傘下”に 株式の34%取得へ
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日産自動車と三菱自動車工業は、日産が三菱自動車に対し、2300億円を超える巨額の出資を行うことを正式に発表しました。この結果、日産の出資比率は34%となって事実上、三菱自動車を傘下に収めることになり、三菱自動車の燃費の不正などの問題は業界再編に発展しました。
発表によりますと、日産と三菱自動車は、日産が、三菱自動車が行う第三者割当増資を引き受ける形で株式の34%を取得する資本業務提携に向けた交渉を進めることで合意したと発表しました。日産が三菱自動車に出資する金額は2373億円に上るということで、提携交渉は今月25日までにまとめるとしています。
この結果、日産は、現在、合わせて株式の3分の1を出資している三菱グループの主要3社を抜いて筆頭株主となって、三菱自動車を事実上、傘下に収めることになります。一方、三菱グループの主要3社は、引き続き主要な株主として、日産と協力しながら三菱自動車を支援していくとしています。
日産と三菱自動車は、提携によって、今回の燃費の不正問題などで著しく低下した三菱自動車のブランドと信用の回復を図ること、日産に加え提携先のルノーとも商品力の強化などに向けた取り組みを一体運用することで効率化するとしています。
そして、東南アジアでの事業を協力して進めることや、それぞれが持つ技術を共有することなどで業務提携し、今後具体的な内容を詰めるとしています。
また、三菱自動車の相次ぐ不祥事が開発部門を中心に起きていて、企業風土や意識の改革を行うことが必要だとして、日産から人的・技術的支援を受けることで三菱自動車の開発部門の改革を進めることができるとしています。
日産とルノー、そして三菱自動車を合わせると、去年の世界全体の販売台数は950万台を超え、世界一だったトヨタ自動車の1015万台、フォルクスワーゲンの993万台などに迫る規模になり、燃費の不正などの問題は業界再編に発展しました。

日産 三菱の取締役候補指名へ

日産自動車は、今後、三菱自動車工業に、取締役候補者をみずから指名することにしています。
具体的には、三菱自動車の取締役11人のうち4人の候補者を日産が指名するとしています。さらに、このうちの1人を、三菱自動車の取締役会で過半数が同意した場合は、三菱自動車の会長として選定するとしています。

国内自動車メーカーの提携関係

国内の乗用車メーカーは、国内外の販売競争や技術開発競争が激しくなるなか、提携関係を強めています。
世界の販売台数が1000万台を超え世界一のトヨタ自動車は、子会社のダイハツ工業のほか富士重工業に出資していて、マツダとは資本関係がないものの幅広い分野で業務提携することで合意しています。
フランスのルノーと相互に出資しあっている日産自動車は、今回、三菱自動車工業を事実上、傘下に収めることになりました。
このほか、ホンダが独立路線をとっているほか、スズキは去年、フォルクスワーゲンと資本関係を解消し、今後の戦略が注目されています。

世界の自動車メーカー 販売台数は

世界の自動車メーカーの去年の販売台数を見ますと、▽1位はトヨタ自動車で、グループで合わせて1015万台となっています。▽2位はドイツのフォルクスワーゲンで993万台、▽3位はアメリカのGM=ゼネラル・モーターズで984万台となっています。▽4位は日産自動車とルノーのグループですが、台数は852万台で、上位3社とは差をつけられた形でした。しかし、日産・ルノーに去年107万台の三菱自動車が加わると合わせて959万台となり、上位3社のグループに迫る規模となります。

国土交通相「国際的な競争力強化を期待」

日産自動車と三菱自動車工業が資本提携交渉を進めることで合意したことについて石井国土交通大臣は12日夜、記者団に対し「わが国の自動車産業の国際的な競争力が強化されることが期待されるがそれを実現するためにも三菱自動車が今回の不正行為の全容を解明し責任を明確化し再発防止策を早急に講じることが必要だと考えている」と述べました。

日本商工会議所会頭「違う動機での再編よかった」

日産自動車と三菱自動車工業の資本提携について、日本商工会議所の三村会頭は12日の記者会見で、「違う動機でこういう大型再編が進めば本当によかった。自動車業界は国内市場が縮小する中でも企業数はほとんど減っておらず、統合・再編が積極的に進められるべきだと前々から思っていたので、結果的に統合・再編が進むことは業界全体としては正しい方向ではないか」と述べました。
そのうえで、「三菱自動車はどうして長い間、深刻な不正が続いてきたのかについて明らかにすることが併せて必要ではないか」と述べました。

Jリーグ規約に抵触か 推移見守る

Jリーグの規約では、リーグ運営の公平性を保つため、クラブ自体やクラブの筆頭株主などが、ほかのクラブやその主要な株主の株式を保有することを禁じています。
現在、三菱自動車は、J1の浦和レッズの50.63%の株式を保有する筆頭株主です。一方、日産自動車は、J1の横浜F・マリノスの筆頭株主です。
日産と三菱自動車が資本業務提携に向けた交渉を進めることで合意したことを受け、Jリーグでは規約に抵触する状況にならないかどうか、今後の推移を見守るとしています。

Jリーグの村井満チェアマンは12日夜、羽田空港で報道関係者の取材に応じました。村井チェアマンは「浦和レッズ、横浜F・マリノスともまだ話をしておらず、詳しい状況はわからない。今後の三菱自動車の浦和レッズの株式保有割合などもわからない段階なので、何も言えない。まずは情報収集を進めたい」と述べました。
Jリーグの各クラブは、来シーズンのリーグへの参加資格となるクラブライセンスの交付を受けるために、来月末までに株主構成も含めて財務状況などを申請する必要があり、浦和レッズは筆頭株主である三菱自動車の方針の確認を進める必要があります。