<神皇正統記>只見で中世写本見つかる
福島県只見町教委は12日、南北朝時代の歴史書「神皇正統記」を1587年(安土桃山時代)に書写した写本が町内で見つかったと発表した。同書の中世写本発見は県内で初めて。町や県の文化財指定を受けることを検討している。
◇
「神皇正統記」は公家の北畠親房が1339年に著した。天皇を中心に歴史をたどり、南朝の正統性を主張した。原本は現存せず、約20点の中世写本が伝えられ、国や自治体の文化財に指定されている。
発見された写本は、江戸時代の医者だった同町黒谷の原田家にあった。
綴葉装(てつようそう)という装丁が、他にはない特徴。数枚の紙を重ねて二つ折りにしてひとくくりにし、折り目の部分を糸でとじ合わせる日本の伝統的な装丁で、「源氏物語」など平安以降の文学書で用いられている。「神皇正統記」の中世写本の元になった写本は、綴葉装だったと推定されている。
(1)大部分の漢字にふりがなが付けられている(2)音読みと訓読みの符号がある(3)歴史的な出来事を記したページに付箋がある−ことも珍しいという。
本には、上野国(群馬県)の寺で祐俊という僧侶が書写したことが記されている。祐俊は京都・醍醐寺の僧侶に随行し、布教のために会津地方を訪れた後、同地方で活動したことから、本が町に残ったとみられる。
調査を担当した久野俊彦東洋大講師は会津若松市で記者会見し「中世末期の本の読まれ方が分かる貴重な資料。表紙や糸が装丁当時のままで破損がなく、文化財として重要だ」と述べた。小池淳一国立歴史民俗博物館教授は「東北の中世は分からないことが多いが、会津の中世文化を解明する手掛かりになる」と話した。
2016年05月13日金曜日