(英エコノミスト誌 2016年5月7日号)
正真正銘のトラブルが中国を襲うのは、可能性の問題ではなく、時間の問題だ。
世界金融危機の後、経済成長率を押し上げるために信用供与の蛇口を開いてお金を借りやすくした中国の判断は正しかった。だがその蛇口を再び閉めなかったのは間違いだった。
中国の債務はここ2年間、2008年の不況に続く2年間に匹敵するハイペースで増えている。国内総生産(GDP)比の債務残高は、この10年間で150%から260%近くに高まっている。この種の増加に続くのは金融の混乱か突然の景気減速であるのが普通だ。
中国がこのパターンの例外になることはないだろう。不良債権はこの2年間で倍増しており、公式統計によればすでに銀行の総貸出残高の5.5%を占めている。実態はもっとひどい。新規債務のざっと5分の2は、既存のローンの利払いに消えている。2014年には、中国最大級の企業1000社の16%で支払利息の方が税引き前利益よりも多くなっていた。
また、中国では融資がもたらす経済成長の大きさがますます小さくなっている。金融危機の前は1人民元を少し上回る貸し出しでGDPを1人民元増やすことができたが、現在では4人民元近い貸し出しが必要なのだ。
政府が見て見ぬふりをしているため、債務はまだしばらく増え続けるだろうし、ことによると、あと数年増え続けるかもしれない。しかし、永遠に増え続けることはない。
債務のサイクルの向きが変われば、資産価格と実体経済がともにショックを受けることになる。誰にとってもうれしくない展開になるだろう。中国が対外債務の抑制に細心の注意を払ってきたのは事実であり(実際、中国は純債権国だ)、この国が抱える危険は国内で作られたものだ。だが、中国で債務が大量に焦げ付くことになれば、そのダメージはやはり莫大なものになる。