川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

ドイツ電力大手が無配当! もしも彼らが「原発」と「火力」を切り捨てたら?

政府のエネルギー政策は矛盾だらけ

2016年05月13日(金) 川口マーン惠美
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エッセン市にあるRWEの本社〔PHOTO〕gettyimages

「お前たちの時代は終わった」

4月20日、ドイツで二番目に大きな電力会社、RWEの株主総会が、大混乱のうちに終わった。

RWE社は100年以上の歴史を持つ大企業で、本社は、かつてのドイツの大動脈であったルール工業地帯の炭鉱都市エッセン市にある。

ルール工業地帯は豊富な炭田を持ち、重工業が隆盛、戦前も戦後もドイツ産業を牽引した栄えある場所だ。今では炭鉱はすっかり陰ってしまったが、RWEは上手にグローバリズムに乗り、ベルギー、オランダ、東欧諸国、イギリス、アメリカなどでもエネルギー企業の買収を進め、手広く事業を進めてきた。

もちろん原発も持っている。RWEの株の25%は、エッセン市など地元の自治体が保持しており、地元では大いに頼りにされている企業だ。

ただ、RWEは今も発電の燃料の半分に石炭、褐炭を使っており、C02排出問題においては、常に環境保護団体の槍玉に上がっている。去年の夏、私が同社の発電所の近くを訪れたときは、敷地からずっと離れたところから写真を撮ろうとしただけなのに、すぐに屈強なSPが飛んできた。それほどネガティブな報道に神経質になっているのだろう。

4月20日の株主総会のときは、会場を環境保護団体のデモ隊が取り囲んだ。報道写真を見ると、どうも百戦錬磨のプロのデモ屋っぽい。道に座り込んで通せん坊はするは、会場に行こうとしている株主たちを脅すはで、暴力沙汰の一歩手前といった騒然とした雰囲気だった。

その前には物々しい数の警官が壁のように立ちはだかり、怯えた株主たちの通行を守っている。株主には、年金の足しにと思い、RWE株の購入になけなしの貯蓄をつぎ込んだ人たちも多かったはずだ。

ようやく開幕し、CEOのスピーチが始まった途端、会場に紛れ込んだ活動家たちが騒ぎ始めた。「お前たちの時代は終わった」というシュプレヒコールが鳴り響き、数分間も続く。そのうち何人かが舞台に迫り、ついに一人の若い女性が舞台に駆け上がった。両手で広げた垂れ幕には、「辞めたほうがいいよ、ミスター・エッチェンベルク」と書いてある。"FOSSILE FREE"と"GREENPEACE"からのメッセージだ。

エッチェンベルクというのはここの地方議員で、RWEの諮問機関のメンバーも務めているが、なぜここで名指しされたのかは不明。結局、この女性は、すぐにSPに取り押さえられて舞台に横たわった。黒の短いワンピース姿が印象的だった。

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