職場で「自殺者」が出たらどう対応するべきか

遺された人の心理的ショックを和らげる方法

共に働いていた人々の心理的な打撃をいかに和らげるか。組織の対応は極めて重要だ(撮影:今井康一)

職場で起こる自殺。それは共に働く人々に計り知れない衝撃を与える出来事である。故人と親しい関係にあった人は、気づけなかった自分を責め、いつまでも苦しむ。また自殺の理由が職場状況や仕事に関する場合、精神的に疲弊している人や自殺念慮がある人は「ラクになれていいな……自分もいっそのこと……」と考えてしまうかもしれない。組織に対し、怒りや悔しさ、虚しさを覚える人もいるだろう。このように、職場で自殺者を出すことは、病死や事故死以上に、組織や遺された人々に深刻な問題を引き起こす。

職場での自殺がもたらす問題。それには大きく分けて2つある。

ひとつは組織の団結力低下である。自殺が起こると職場内に動揺が走る。人を信頼できなくなり孤立感が増し、仕事に対する意欲も消失して職場全体の士気が低下することは珍しくない。

もうひとつは自殺の連鎖だ。自殺は新たな自殺を呼ぶ。アイドルの後追い自殺などがその例だ。普段は元気にいる人でも気持ちが揺れ、徐々に自殺へと流されることがある。自殺の手段さえも模倣される場合もある。

自責の念にかられ外出できなくなった上司

あるケース(フィクション)を紹介しよう。

SEとして働いていたAさんは独身寮に住む35歳。課長に昇進したと同時に、ある大きなプロジェクトを任された。しかしスタートして2カ月目、契約先の企業からクレームが入り、プロジェクト自体を見直さなければならなくなってしまった。責任者であるAさんにかかる重圧。残業時間は月に100時間を超え休日出勤も続き、付き合っていた彼女とも疎遠になってしまった。

ある日、上司であるB氏からプロジェクト全体の進捗の遅れと会社の損失を厳しく追及され、課員の前で叱責を受けた。翌朝Aさんは出社せず、同僚が部屋に入ったところ、机の上に遺書があった。産業医とB氏、人事担当者が実家に連絡を取ったがなしのつぶて。3日後、会社から約600キロメートル離れた山中で亡くなっていたことが判明した。

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