使命感に駆られてコンプラ違反!?
帝国データバンクの調査によると、2015年度のコンプライアンス違反に端を発する倒産件数は289件となり、前年度の3割増、かつ過去最多を更新したそうです。2009年は94件ですから、比較すると倍以上になります。
また、2004年発覚のカネボウの粉飾事件や2011年発覚のオリンパスの粉飾事件、直近ですと東芝の「不適切会計」事件や王将フードサービスの使途不明金事件など、誰もが知るような大企業で、その命運を左右するようなコンプライアンス違反が発生して世間をにぎわせています。
一言でコンプライアンス違反と言っても事案は様々です。先の調査によるとその内訳は粉飾が29%、業法違反(許認可等の違反)が26%、資金使途不正が23%で、全体の80%近くを占めています(業法違反では建設業が多いです。他にもコンプライアンス違反といえばセクハラやパワハラ、その他の労務紛争などもありますが、さすがに倒産にまでは至らないので出てきません)。
なぜコンプライアンス違反で潰れる企業が増えているのか、その背景を探りましょう。
会社を追い込むほどのコンプライアンス違反について、元々の動機であり目的から区分すると、以下の4つのようなタイプに分けられると推察されます。
A)金銭欲型:権力者が個人的に大きなカネを得るため
B)生きるため型:会社を存続させるために金融機関や取引先を欺く
C)虚飾型:権力者が個人的なプライドを守るため
D)保身型:権力者が地位と報酬を保持するため
Aについては、倒産するレベルのことをやろうとすると、初めから会社を潰して逃げるつもり、あるいはいつ発覚しても構わないように準備しながら、詐欺まがいのことを行います。半面、そのレベルで取り組まない限りは、会社の存亡を揺るがすというレベルには至りません。
毎年1-2件くらい億単位、10億単位の横領事件が起こりますが、不思議とそれによって会社や組織が潰れたということにはなっていません(年金原資が減るなどの深刻なダメージは残しています)。それだけ抜いてもわからないくらいに余裕がある組織でこっそりとやり続けるのでしょう。
ところが、BやCおよびDについては、発覚時には「時すでに遅し」という状態になっていて、潰れなかったとしても、他者に救済してもらうことで経営の自主性が大きく変わったりする事態になりがちです。主体者にとっては(Aと比べて)他人に迷惑をかけている認識はまったくなく、むしろある種の使命感に駆られてやっているような様子もあります。