経営再建中のシャープを買収する台湾の電子機器受託製造大手、鴻海(ホンハイ)精密工業が、シャープの国内外グループ従業員約4万3000人のうち、最大7000人を削減する検討に入ったことが12日、分かった。中国の拠点で抱える1万人以上の従業員などが対象になる見通し。シャープが早期に黒字回復するには大胆な固定費削減が必要と判断したとみられるが、雇用確保を重視するシャープや主力取引銀行は大規模な人員削減に慎重姿勢で、曲折も予想される。
人員削減は、鴻海と重複する海外拠点や不振の太陽電池事業、本社の管理部門が対象になるとみられ、今年度中の実施を検討している。シャープは経営危機が表面化して以降、2012年度に国内社員約3000人、15年度に同約3200人が、それぞれ希望退職に応じた。今回検討されている国内外7000人はグループ全体の約16%に相当する大規模な削減になる。
4月2日の買収契約締結後の記者会見では、鴻海の郭台銘会長は買収後のシャープでの雇用について、「最善を尽くして維持し、残ってもらえるようにしたい」と話していた。だが、シャープの主力事業である液晶パネルを巡る環境は激変しており、確実に早期に再建を果たすには、大規模な人員削減は避けられないとの判断に傾いているとみられる。
一方、シャープが12日発表した16年3月期連結決算は、液晶事業などの不振が響き、2559億円の最終(当期)赤字(前期は2223億円の赤字)だった。大幅赤字により、借金などの負債が資産の総額を上回る債務超過に陥った。鴻海が新経営陣9人のうち6人を推薦し、その1人である鴻海グループの戴正呉副総裁(64)が買収完了後に社長に就任することも正式発表した。6月末にも買収は完了する見通しだ。
東京都内で記者会見した高橋興三社長は「2年連続赤字の責任がある。大変申し訳ない。自主再建は無理となり、新しい道筋を付けることが責任と考えている」と述べ、買収手続きが完了し次第、退任する意向を表明した。
連結売上高は前期比11.7%減の2兆4615億円。太陽電池事業も不振で、本業のもうけを示す営業損益は1619億円の赤字(前期は480億円の赤字)だった。不採算設備や在庫について大規模な損失処理をしたため、312億円の債務超過になった。【土屋渓、古屋敷尚子】
読み込み中…