燃費不正問題に揺れる三菱自動車が、軽自動車分野で提携する日産自動車の傘下に入り、再出発を図ることになった。

 日産は2300億円余を投じて三菱自の筆頭株主となり、取締役会長を含む複数の役員を送り込む。三菱自のブランドや販売網は維持しつつ、資材の購入や生産拠点の共用化、電気自動車を含む次世代車の技術開発、海外市場の共同開拓など、幅広い提携に踏み込む。

 環境対策や自動運転を巡る競争を勝ち抜くには巨額の投資が必要で、経営規模がモノをいう。ルノー・日産グループに三菱自が加われば、トヨタ自動車グループなどと並ぶ世界トップ級の生産台数になる。三菱自から供給を受けている軽自動車は、日産の国内販売台数の4分の1を占めるだけに、中断している生産と販売を早く再開させたい……。

 日産としては、2度にわたるリコール隠しの反省を生かせなかった三菱自について、手をさしのべる損得をてんびんにかけた末の判断だろう。三菱自の従業員や販売店、下請け部品メーカーに加え、先行きを案じていた購入者にとっても、ひと息つける話かもしれない。

 ただ、言うまでもなく、提携の成否は三菱自がウミを出し切り、法令を守る会社に生まれ変われるかどうかにかかる。

 データ偽装や違法な試験を続けていた問題は、三菱自から国土交通省への2度の報告を経ても全容がわからない。軽自動車以外でも、乗用車の人気車種で公式に届けていた燃費と実際に大きな隔たりがあることがわかったが、原因は不明のままだ。

 軽自動車4車種のデータ偽装では、試験を委託した子会社の管理職社員が関与を認めたという。しかし、具体的な不正の経緯は明らかでない。社内の指示系統や責任の所在があいまいだから調査にも手間取っているのでは、との疑問すらわく。

 日産は「不正の解明は三菱自の責任」との姿勢だが、積極的にかかわるべきではないか。今回の三菱自とは状況が異なるが、90年代に経営危機に陥った日産に乗り込んだカルロス・ゴーン氏は、社内の組織や慣行にとらわれず病巣をあぶり出し、対策を練り上げた実績がある。

 三菱商事の出身で、00年代半ばから三菱自の再建を指揮してきた益子修会長は、企業体質が変わらなかった理由について「外部からの目や人材が入りにくい閉鎖的な社会で仕事が行われてきた」と語った。

 今、「外部の目」を務めるべきなのは日産だ。