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三菱自動車 日産傘下で体質改善を

 日産自動車が、軽自動車の燃費不正で経営が悪化している三菱自動車に約2400億円を出資し、傘下に収める。軽の供給を受ける日産は不正の被害者的な立場だ。提携解消の見方もあったが、国内外をにらんで軽の技術を取り込み、規模拡大も図るうえで、関係強化に踏み込む利点は大きいと判断したようだ。

     三菱自については、購入者らに対する巨額の補償費負担や急激な販売の落ち込みが重荷となっているうえ、下請け企業など取引先に経営不安が波及する心配も出ていた。

     完成車の工場がある岡山県や愛知県を中心に、1次下請けは1000社以上、約40万人が働いているという。地元自治体だけでなく、政府も地域の雇用が揺らぐのを懸念せざるを得ない事態だった。

     危機の打開には、外部の支援が不可欠とみられたが、三菱グループは動きづらかった。2000年以降のリコール隠しによる経営危機は、三菱重工業などの増資で支えた。だが、再び不正に走った身内に手を差しのべるのはグループ全体のイメージを傷つける恐れがあったからだ。

     こうした中で日産は、事実上の救済となる巨額出資に踏み切る。

     トヨタ自動車も軽を販売する国内市場で、日産が軽を扱わない選択はあり得ない。将来的に需要が伸びるアジアなど新興国市場でも、軽の技術は戦力だ。また、欧州のラリーなどで培った三菱ブランドの高い知名度と堅実な販売力も魅力である。

     日産と提携先のルノーに三菱自も合わせた世界販売台数は、トヨタやフォルクスワーゲンに迫る年間約950万台だ。日産のゴーン社長は「16年度に1000万台」の目標を公言している。その実現が目前に迫り、「世界一」にも手が届く。

     日産は、旧安田財閥系企業が中心の芙蓉グループの一員だが、三菱自を通じて三菱グループともつながることになる。600社以上・総売上高50兆円超の企業集団と、関係を築く意味は小さくないだろう。

     しかし、三菱自の今後は不透明で日産の足かせになる恐れもある。

     問題発覚後、日産ブランドも含む軽4車種の4月販売は前年同月比60%以上減り、急な回復は望めない。一方で不正の対象車種が広がる心配があり、経営のどのレベルまで不正に関与していたかという核心も未解明だ。

     何よりも企業体質を根本から見直さなくてはいけない。2度の不祥事で経営の瀬戸際に追い込まれながら、なぜ再び不正に手を染め、自らただすこともできなかったか。そうした体質をどう改めていくのか。

     三菱自が信頼を取り戻す出発点は、トップの交代や販売の回復ではなく、その点に尽きるだろう。

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