プレゼンテーションの方法は「演劇」で!企業特有のカタさを感じさせない、ソニー主催のアイデアソンとは?
[ Report ] 2015.10.30こんにちは。ライターの塩谷です。突然のわたくしごとで恐縮ですが、お仕事をさせていただく際、お相手が大企業だとちょっと緊張してしまいます。ビルが大きいし、入室するまでの警備が厳重だし、みなさんピシッとスーツだし、漂うフォーマル感にこちらもどんどんフォーマルに……。
でもお仕事とはいえ、「これだ!」というアイデアって、ワイワイとした雑談の中から降ってくる、ということも多いですよね。
ここ最近、大企業がオープン・イノベーションとして外部のクリエーターと協業する機会が増えています。でも、実はそこで重要なことは、どんなアジェンダを用意するか……ということ以上に、緊張感をペタンコにして、ワイワイとした空気を創ることなのでは? とも思っています。
10月17日にソニーが開催したアイデアソンでは、プランナー、デザイナー、プランナー、エンジニア、学生さん……様々な職種・年齢の方々が、渋谷のLoftwork COOOPに集合しました。中には仙台や広島などの遠方から来てくださった方も! そこにソニーのプランナーやエンジニアも加わり、初対面同士で1日を過ごすことになるのですが……
開始30分後には、ワイワイとした空気に! その様子をレポートいたします。
「演劇的ラピッドプロトタイピング」とは?
アイデアソンの集合時間は、土曜日の朝10時。ちょっと眠たそうな参加者もちらほら。そこでみんなの前に現れたのは、若い男女二人……
男性「ねえねえ。これ、何か知ってる?(電球を取り付けながら)」
女性「えっ、電球でしょう? ……あれ、音が流れてる!」
なんと、突然の演劇!ここで参加者のみなさんも目が覚めたようで、空気がどっとほぐれました。
この演劇の題材になっているのは、ソニーの「LED電球スピーカー」。一見普通の電球に見えるのに、スピーカーとして音楽を響かせるという驚きのプロダクトです。
ですが、その機能性や革新性を口で説明するよりも「電球から音が鳴り響くぞ!」というサプライズを一緒に体験してもらったほうが、ずっとわかりやすい。そのために演劇からスタートしたようです。
天井に取り付けられたLED電球スピーカーから音が降り注ぐ中で、ようやくソニー・TS事業準備室の大口さんより、本日のアイデアソンの趣旨が説明されました。
「ソニーが提案するLife Space UXでは、社内のみでアイデアを練っていくのではなく、社外の様々なクリエーターと一緒に試行錯誤を重ねていきたいと思っています。今回はその第一弾でもある、アイデアソンです。想像以上に多くの皆様にお集まりいただき、私たちも感動しています。今日は、楽しみながら色んなアイデアを出していきましょう!」
この日のアイデアソンは、「演劇的ラピッドプロトタイピング」という形式で執り行われました。
通常のアイデアソンは、プレゼンシートを作ったり、簡単なプロトタイプを作って説明するところでおしまい。でも今回は、プレゼンシートではなく、なんとプロの役者さん5名が参加し、みんなのアイデアを演じてくれるのです。
「演劇的ラピッドプロトタイピング」のメリットは……
- アイデアの活用シーンを、プレゼンよりもリアルに訴求できる
- 言葉で説明するのが難しい「UX」を説明することができる
- 参加者がアイデアを出すことに集中できるので、思考レベルが上がる
- 演劇を客観的に見ることで、ブラッシュアップができる
- 時には役者側からのアイデアが加わることも
などでしょうか。
LED電球スピーカーを題材に、どんなアイデアが出てくるのでしょう? ディスカッションをもとに、アイデアが膨らんでいきました。
学生も社会人も、自由にアイデアをディスカッション
しばらくして、壁に張り出される各々のアイデアの種。興味のあるアイデアのところへとそれぞれが集まり、最終的には10個のチームに分かれていきました。
このLED電球スピーカーを「ブンブン振り回す」というアイデアは、役者さんから提出されたものでした。面白そう(そして危険そう)だと思いましたが、こちらは実行に移されることはなく、残念……。でも、アイデアの自由度が高いのは素晴らしいことですね。
参加している学生さんに注目していると……ソニーの社員さんや、社会人だらけのチームの中でもしっかり自分の意見を伝えていました。「これは就職活動だ!」と思って挑むと、こんなに攻められないかもしれませんが、チームの雰囲気は年齢・職種を超えてフラット。とってもイキイキしています。
プログラミングが主となる「ハッカソン」と異なり、アイデアを発表するのがアイデアソン。でも、手を動かすチームも多かった印象です。映像を作ったり、その場にある紙コップやペンをフル活用してプロトタイプを創ったり。
プログラミングしているのかな? と思って覗いていみると、無心に台本を執筆中でした。アウトプットが演劇方式ですから、どのチームも台本必須です。日頃とは異なる頭を使いそうですね。
そうしてアイデアを固めていくこと3時間……。
いざ、発表の時間になりました。今回のレポートでは、チーム「お伽話」の様子をお伝えします。
寝かしつけを助けてくれる、お友達のようなLED電球スピーカー
最初に掲げられたアイデアの種はこちら。
LED電球スピーカーを、「よみきかせスピーカー」にできないか? というもの。
プレゼンテーションは、演劇からスタートしました。
女優さんが、子どものためにゆっくりと物語を読み上げます。
そうすると、風の音がザワザワ…ヒューン……とながれたり、光がピカピカッと光ったり。
お母さんの声が、まるで物語の中に導いていってくれるようです。
この世界観にお子様ものめり込み、気づけば物語の中でスヤスヤ……。ホッとして自分の時間に戻ることができる、お母さん。
お母さんのプライベートタイムを助けてくれる、LED電球スピーカーのお役立て方法でした。
「寝かしつけに、タブレットやスマートフォンでまぶしい動画を見せたくない…でも、絵本だけだとなかなか集中して聞いてくれない。そんなお母さん・お父さんのために、絵本の世界を体験できるようなアイデアを考えました」
その名も「BULB FRIEND」というもの。まるでぬいぐるみのように、LED電球スピーカー(BULB)を子どもにとって「お友達」のような存在に……と提案してくださいました。
こちらの「お伽話」チームの発表が、当日の最優秀種を受賞。
評価ポイントはどのようなところだったのでしょうか……?
審査員として参加したのは、多摩美術大学教授でAXISアートディレクターの宮崎光弘さん。ご自身もメディアアーティストであり、インタラクティブアートの作品制作を手がける株式会社プラプラックスの代表である近森基さん。ライフスタイルメディアを運営するアイランド株式会社の代表、粟飯原理咲さん。そして、ソニーTS事業準備室の四本直樹さんです。
みなさんが口々に評価したポイントとは……
「生活空間における新たな体験をデザインする」というコンセプトに、ぴったりとはまったアイデアだったこと。そして何より、役者さんたちとのコラボレーションによって、より素晴らしいプレゼンテーションになっていたこと。
これぞ、「演劇的ラピッドプロトタイピング」の魅力をふんだんに活かしたプレゼンテーションといえるものでした。
優勝チームは、このトロフィーをゲット!そして、メンバー全員にLED電球スピーカーが贈られました。(加えて、優勝賞金もありました!)
さらに、こちらの「お伽話」のアイデアは11月3日までLIVING MOTIFで開催されるLife Story by Sony and LIVING MOTIF展にて展示されています。このアイデアソン後、およそ1週間で作成されたプロトタイプ。どのような形になっているかは、ぜひ会場でご覧ください!
でもでも。他にも、とっても面白いアイデアがたくさん発表されました。その様子は、レポート後編でお伝えしたいと思います!
Life Space UXの最新情報は、こちらのFacebookページにてお伝えしています。
11月3日まで六本木AXISにて開催中のLife Story展もお見逃しなく!