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KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)

未来をデザインする Ideathon & Makeathon 2045年のライフスタイル 開催レポート

「未来をデザインする」と題したロフトワークのシリーズイベント第4弾が、2015年10月13日~14日の2日間にわたり千葉県柏の葉キャンパスのKOILで開催されました。30年後の地球や暮らし、テクノロジーを想像し、そこに必要な商品やサービスを考え、プロトタイピングする。そんなアイデアソンとメイカソンを組み合わせたプログラムを通じて、ドキドキわくわくするような2045年の未来予想図を描きました。

はじめに、全体の進行を務めるロフトワークの松井創が、「ここで生まれた新しいアイデアが、将来当たり前になっている。そんなアイデアを出せる2日間にしていきたい」と挨拶。アクサ生命保険株式会社の協賛による開催となった今回は、同社のメンバーも参加者に加わり、未来をデザインするプロセスを体感しました。

ロフトワーク プロデューサー 松井 創ロフトワーク プロデューサー 松井 創

Keynote

制約の中で、わくわくドキドキ心豊かに生きるには?

今回のイベントは、25年の企業勤めから大学に転職して10年、環境と経済の両立について考えてきたという東北大学名誉教授で、合同会社 地球村研究室 代表でもある、石田秀輝氏のキーノート・スピーチでスタート。「未来を考える際には思考回路を変える必要がある」と主張する石田氏は、「地球環境問題」から、バックキャスト思考の重要性を解説していきました。

地球村研究室 代表 東北大学名誉教授 博士  石田 秀輝氏地球村研究室 代表 東北大学名誉教授 博士 石田 秀輝氏

日本人の9割が地球環境に関心を持ち、テクノロジーの質も、使う人たちの質も高いのに、依然として環境劣化が止まりません。その証拠にCO2排出量は10年前とほぼ同じ。なぜこんなことになるのでしょうか?

それは、「エコ商材が商品の免罪符になり、企業は大量生産・大量消費の構造を変えずに看板だけエコに置き換えている。つまり、置き換えのテクノロジーを市場に投入しているだけで、使い方やライフスタイルの提案を一切していない。つまり、制約の中で豊かに生きるという概念はまったく反映されていない」と石田氏。

さらに、「持続可能な社会=環境と成長(命)の両立」だとして、「我慢を強いられる生活は楽しいですか?大事なのは、厳しい環境制約の中で、わくわくドキドキ心豊かに生きること。それが持続可能な社会であり、結果として経済的な価値も生み出すことになる」と強調。

日本は間違いなく豊かですが、将来への不安を感じている日本人が8割を超えていることを忘れてはなりません。事実、モノの豊かさより心の豊かさを求める動き、車より自転車がかっこいいと思う若者、週末にアウトドアを求める人たち、河川敷のガーデニングは予約でいっぱいなど、明確な予兆は現れていると言います。

日本の豊かさは物質的豊かさによるものであり、この先どう進むべきかを考える上では、「心豊かに暮らすことを担保しながら、地球温暖化やエネルギーの枯渇を引き起こしている人間活動の肥大化を縮小していく必要がある」と石田氏は語ります。

そこで重要なのが、バックキャスト思考です。たとえば、入浴を例に考えてみましょう。 2030年には日本の全世帯が入浴できるだけのエネルギーも水もなくなると言われる中で、どうやって入浴すればよいのでしょうか。

フォアキャスト思考 ⇒ 入浴回数を減らす、シャワーにする、近くの川へ水遊びに行く
バックキャスト思考 ⇒ 毎日お風呂に入る、水のいらないお風呂

つまり、水のいらないお風呂に入るという新しいライフスタイルを考え、そこからソリューション(たとえば、水のいらないお風呂の作り方)を考えるのです。「こうすると、従来とまったく違う新しいテクノロジー、ライフスタイルの価値観を作ることができ、そこに我慢ではなく、わくわくドキドキするようなテクノロジーの一遍を作ることができる。足場を変えて検討するとはこういうこと」と石田氏。

今必要なのは、はじめに「こんなライフスタイル、こんな暮らし方の価値観を市場に投入したい」と宣言し、そのためにテクノロジーを作る流れ。こうした制約を自分たちにかけられるかどうかがカギになります。最後に石田氏は「制約の中で豊かになることを考えれば、何が実現すべきことで、何が不要なのかが見えてくる。みなさんも2045年の世界について、ぜひ足場を変えて検討してみてほしい」とアドバイスしました。

Workshop Day1 アイデアソン

未来を想像し、人々の欲求を満たすアイデアを考える

ここからは、石田氏が提唱するフレームワークをそのまま2日間の活動に落とし込んだワークショップです。ファシリテーターを務めるロフトワークの棚橋弘季は、「さまざまな制約がある中で2045年にどんな暮らしをしたいかを考えることから出発。その上で、それを実現するために必要な商品やサービスのアイデアを考え、簡単なプロトタイピングをしていく」と説明。

ロフトワーク イノベーションメーカー 棚橋 弘季ロフトワーク イノベーションメーカー 棚橋 弘季

制約の中で考える“バックキャスト思考”の実践がこのワークショップの重要なポイントです。さらに今回は、優れたアイデアに対し賞金総額100万円が用意されました。1チーム4~5名で編成された計15チームは、KOILフロアの様々な場所に集まり、未来をデザインするワークをスタートさせました。

ワークの流れは次の通りです。

<ワークショップ1日目>

来るべき未来において、人々がどのような社会環境で、どのような生活を送るかを想像しながら、人々の欲求を特定し、その欲求に応えるアイデアを考える。


ワーク1:社会環境の設定
2045年を予測し、議論の前提としてどんな制約がある社会を想定するかを考え、その要因となる社会トレンドや技術トレンドなどを社会環境として設定する。

ワーク2:ライフスタイル・ペルソナ・インサイトを考える
設定した社会環境におけるライフスタイルの変化を考え、特徴的なユーザをペルソナとして設定。併せて人々の欲求がどう変化していくかを考える。

ワーク3:解決策のアイデア出し
解決策としてどのような商品やサービスがあったらよいか、ソリューションを考える。具体的には、チーム内でのブレストを通じて100のアイデアを出し、その中で優れていると思うアイデアを1人につき5つ選んで投票。優れている理由に着目しながら、アイデアをブラッシュアップし、最終的にチーム内で5つのアイデアに絞り込む。

社会環境の変化を予測し、ペルソナ、解決のアイデアを議論していきます。社会環境の変化を予測し、ペルソナ、解決のアイデアを議論していきます。

各チーム、アイデアの方向性が見え始めたところで、株式会社良品計画でMUJI passportを手がけた奥谷 孝司氏が、自身の経験をもとに、敢えて地に足のついた現実的な観点からワークのヒントを提供しました。

奥谷氏は、これから先考えてもらいたいこととして、「EC=Engagement Commerce」という言葉を挙げ、「いい意味での悪だくみ(Good Intention=)がありつつ、愚直に商売することが大事。かつ、正しく伝えることを疎かにしてはならない。そのためにも、オンラインとオフラインの両方を組み合わせて、デジタルな技術を活かしながらお客様とつながることを考えてほしい」と説明。

審査員の奥谷 孝司氏審査員の奥谷 孝司氏

さらに、「伝わるメッセージは、アナログとデジタルの融合にある」として、「2045年に突然人間が洋服を着なくなることはあり得ない。家も必要、食べ物も必要。ただし、その使い方や考え方にはデジタルの領域が欠かせない。技術はどんどん進んでも、人間は30年くらいでは変わらないということ。ここに着目して新しいビジネスを考えると、案外身近なところにアイデアのタネがある」と語りました。

ワーク4:アイデア評価
ワーク3で5つに絞ったアイデアを他チームに説明。他チームがどんな感想、疑問を持ったかを引き出し、翌日の具体化のプロセスに向けてアイデアをブラッシュアップする。

各チーム、メンバー数人を残して他チームのアイデアを聞いて回ります。各チーム、メンバー数人を残して他チームのアイデアを聞いて回ります。

Workshop Day2 メイカソン

未来の商品・サービスを形にし、共有する

2日目は、最終発表に向けてワークも大詰めです。慣れない手法に苦戦するチームも見られた1日目を振り返り、「アイデア出しに苦労しているチームは、十分な議論ができていない可能性がある。アイデアの良し悪しは別として、チームで協力し合って結実させていくという意識で取り組んでみてほしい」と棚橋。

また、審査員の奥谷氏は、「2045年とはいえ、個人的には、どの程度リアリティがあるか、2045年が若い人にとって意味があるものになっているかどうかが興味深い。ポイントは、持続可能性と現実性。しっかり理論武装して臨んでほしい」とコメント。こうして賞金をかけた最後のワークがスタートしました。

<ワークショップ2日目>

アイデアを形に(プロトタイピング)し、考えたアイデアをライフスタイル提案資料としてA1ポスターにまとめ、各チーム3分で発表する。


ワーク5:システム・シナリオの検討
アイデア検討の最終フェーズ。ここまでは利用する人の視点で価値を考えてきたが、今度はビジネス視点から、組織がサービスや商品をサステナブルに提供し続けるためのシステムおよびシナリオを考え、マイルストーンを明らかにする。

ワーク6:プロトタイピング
商品なら物理的なプロトタイプ、サービスなら映像などで内容がわかるようにしたプロトタイプを作る。

プロトタイプ、発表に向けて、システムとシナリオの議論を深めていきます発表に向けて、システムとシナリオの議論を深めます。

ワークの時間を縫ってチーム単位でランチタイム。ランチを食べながらも議論は尽きません。 ワークの時間を縫ってチーム単位でランチタイム。

発表に向けて、プロトタイプを作りこみます。発表に向けて、プロトタイプを作りこみます。

発表&表彰

2日間練り抜いたアイデアの価値を3分でアピール

<発表>
全ワークが終わり、いよいよ最終成果の発表です。3分という制約の中で、ロジカルかつスマートなプレゼンを展開するチーム、寸劇を交えて2045年を表現するチーム、プロトタイプで笑いを誘うチームなど、15チームがそれぞれに個性あふれるプレゼンを実施。参加者全員が、普段の仕事を離れ、業界や組織の枠を超えて、まだ見ぬ2045年に夢を膨らませました。

各チームの発表の様子各チームの発表の様子

また、人間自身が発電する仕組み、人を冬眠させる会社、地域の伝統を復活させるルーツ祭りといったアイデアに混じって、誰でも農作業のプロになれる村、学校に校舎や先生が要らなくなるサービス、食べることで記憶できる暗記タブレットなど、学びや教育にフォーカスしたアイデアが多数見られたのが印象的でした。

<表彰>
審査員を務めたのは、豊橋技術科学大学 岡田美智男氏、ifs未来研究所 所長 川島蓉子氏、奥谷孝司氏、の3名。困難を極めたという審査では、社会環境、ライフスタイル、ペルソナとインサイトなど場面設定の総合的なオリジナリティと整合性や、マイルストンの実現可能性などの審査基準を軸に、アイデアそのものの価値はもちろん、ポスターやプロトタイプの完成度、プレゼンでの表現力が総合的に評価されました。

審査員の豊橋技術科学大学 岡田美智男氏、ifs未来研究所 所長 川島蓉子氏と奥谷氏審査員の豊橋技術科学大学 岡田美智男氏、ifs未来研究所 所長 川島蓉子氏と奥谷氏

審査の結果、1位~3位に選ばれたアイデアと、参加者による投票で一番多くの票を集めたアイデア(特別賞)をご紹介します。

【1位】
●チーム年齢不詳

スキルバンクからスキルを取り出して食べたり、他人にスキルを譲ったりすることができる仕組み。これによりスキルが循環する社会を実現。

チーム年齢不詳チーム年齢不詳

「学びに関するアイデアは他チームでも出ていたが、プレゼンの質、ポスターの完成度などを総合的に評価した。せっかくこれだけのチームがあるので、同じテーマのチームが一緒に考えていくと、よりいいアイデアになると思う」(奥谷氏)

【同率2位】
●チーム スピロ

どんな場所にいても働ける未来をつくる。たとえば、ある眼鏡をかけると、私服でいてもスーツを着た状態で相手に映る。

チーム スピロチームスピロ

●チーム ゴートゥザネイチャー
「定住+旅行」と「移住」の間に位置付られる「豊住」という概念を提案。

チーム ゴートゥザネイチャーチームゴートゥーネイチャー

「結局1チームに絞り切れず、両者に幸せを分けることにした。どちらも未来の働き方がテーマなので、賞金だけでなく知恵もシェアしてさらに進化させてほしい」(川島氏)

【4位】
●チームドライ

自然と共生するテクノロジーを活用し、1000年住める生きた木の家を実現。

「科学技術の観点から考えても、エコシステムがきちんと作れて、しかも木の中に住めるなんて夢がある」(岡田氏)

チームドライチームドライ

【特別賞】
●チームルネッサンス

他人の人生のチップを埋め込むことで、住居選択と職業選択の自由を可能にし、より豊かに生きられるようにするサービス。

チームルネッサンスチームルネッサンス

2日間を振り返り、アクサ生命保険株式会社 取締役 代表執行役社長兼CEOの、ジャック・ドゥ・ペレティ氏は、「バックキャスティングというこれまでにない考え方で、未知の業種、未知の方々と、未来について非常に濃い議論ができたと思います。ご参加ありがとうございました。」と感謝の意を述べ、全プログラムが終了しました。

クサ生命保険株式会社 取締役 代表執行役社長兼CEO ジャック・ドゥ・ペレティ氏アクサ生命保険株式会社 取締役 代表執行役社長兼CEO ジャック・ドゥ・ペレティ氏

審査員から次の展開を期待する声もあったように、ここで生まれたアイデアが未来の当たり前になる日が来るかもしれません。

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