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経典の差別語、真宗2教団・解放同盟の協議ヤマ場(1/2ページ)

2016年4月29日付 中外日報(時事展描)

浄土真宗本願寺派と真宗大谷派が経典の差別表現をめぐって、それぞれ部落解放同盟中央本部および同広島県連合会と進めてきた協議がヤマ場を迎えている。浄土真宗の根本聖典である浄土三部経の一つ、『観無量寿経』に出てくる「是栴陀羅(旃陀羅)」の言葉をどう扱うか。協議の中では、この言葉を削除することなども話し合われたが、教団側には経典の変更はできないとする意見も根強く、両派の対応が注目されている。(萩原典吉)

削除か注釈明記か

「栴陀羅」問題の経緯が記されている2冊の本
「栴陀羅」問題の経緯が記されている2冊の本

『観経』は、苦悩にあえぐ王妃・韋提希の救いを説く経典。父王を殺害した王子の阿闍世が母の韋提希も殺そうとした時、家臣が「古来、悪王を倒して王位に就いた王子は多いが、母を殺した王子はいない。それは栴陀羅のすることだ」と諫め、阿闍世が思い直したとされる。「栴陀羅」はインドの被差別民を意味する。

解放同盟広島県連の岡田英治副委員長は「長い間、墓石に刻まれた『栴陀羅男』などの意味を知らないままに、我々は手を合わせてきた。その実態が今も経典で続いている。この現実を直視してほしい」と憤りを隠さない。加えて昨今の社会情勢の中で、経典の差別表現がヘイトスピーチにも利用されかねない、と懸念する。

江戸時代以来、近年まで東西本願寺は「栴陀羅」を「日本における穢多、非人」と注釈してきた。現在は「重大な差別性を持った発言」(大谷派『現代の聖典 学習の手引き』)、「部落差別を温存し助長する用語として利用してきた」(本願寺派『浄土真宗聖典』)としているが、法要などでの読誦は続けている。

本願寺派と解放同盟は計6回の協議を行う予定で、すでに2013年7月から5回の協議を重ねた。その中で、同派は①「栴陀羅」の言葉がさらなる悪縁を生じさせないための措置を講じなければならない②問題の部分で、阿闍世を諫めるに当たり、家臣は「『毘陀論経』=バラモン教典=によると」と前置きしているように、この部分は仏陀の教えに基づく発言ではないことを明示する必要がある――との見解を示した。ただ協議は当初2年間で終了する予定だったが、15年1月に5回目の協議が開かれて以降、すでに1年以上が過ぎている。

大谷派は15年6月に委員会を立ち上げて協議を重ね、現在は報告書の作成に入ったようだ。