オバマ米大統領が今月下旬の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせて広島を訪問することについて、中国や韓国などアジアの外交当局やメディアに反応が広がった。中国は犠牲者を追悼する意義は認めつつも、第2次世界大戦で日本の侵略を受けた立場から、安倍政権をけん制する姿勢をにじませている。
中国外務省の陸慷報道局長は11日の記者会見で、「(オバマ氏の広島訪問の)日本の目的が国民やアジアに深刻な災難をもたらした軍国主義の道を二度と歩まないと世界に表明することであってほしい」と指摘した。安倍政権に対して、被害者の立場を強調しないようけん制した発言だ。
同時に陸氏は「原爆の投下は軍国主義の幻想を砕く一方で、多くの市民の犠牲を生んだ。無辜(むこ)の市民が受けた苦痛は同情に値する」とも表明した。
韓国政府は静観する構えをみせる。外務省当局者は11日、「米国は韓国人も含めた原爆の犠牲者を哀悼する意味があると説明している」とした。今回の訪問については「『核兵器なき世界』を通じた平和と安定を追求するオバマ大統領の信念に基づいて実現したと理解している」と述べた。
一方、シンガポール国営のニュース専門テレビ局、チャンネル・ニュース・アジアは「歴史的な訪問」として国際ニュースのトップ級で10日夜から11日にかけ、繰り返し報じた。オーストラリア公共放送(ABC)や豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドは11日、「現職大統領による初の訪問となる」などと事実を淡々と報じた。
ABCは東京特派員による電子版の記事で「米大統領による広島訪問は過去数カ月の間、熱く議論されてきた」として、日米間で訪問の意義を巡る解釈に温度差があることを伝えた。
欧米メディアは総じて前向きに受け止めている。英メディアはいずれも「歴史的」(フィナンシャル・タイムズ)などと大きく報じた。BBCをはじめ各メディアは米政府は原爆投下の事実について謝罪はしないが、訪問そのものが被爆地である広島にとって大きな意味があると指摘した。