資産形成プロジェクト
今年の確定申告から(昨年12月末日現在で)5,000万円超の国外財産をお持ちの方は、その内訳明細を税務署に報告することになりました。そのせいか、このところ国外財産についてのご相談が増えています。
■ 知らないはずなのに、なぜわかる海外への投資!?
◆ 税務署が知るにはワケがあった!
”国外への送金”や”国外からの入金”があると、ある日突然、税務署から「国外送金等に関するお尋ね」が送られてきます。税務署からお尋ねとなると、誰でも何も悪いことをしていなくても、「どんな指摘をされるか」と不安に駆られるものです。
では、税務署はどうやって皆さんが海外送金等をした事実を把握しているのでしょう?実は至って簡単で、銀行などが税務署に報告していたからなのです。
具体的には、1998年に「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」が施行されて、いまでは、銀行等の金融機関は”100万円を超える国外送金(2009年3月までは200万円超)”は、税務署へ「国外送金等調書」を提出する義務が生じたためなのです。
◆ 銀行が税務署に報告する内容は?
銀行が税務署に提出する「国外送金等調書(下記調書参照)」には、つぎのような内容が記載されます。
● 国外送金か、国外からの送金の受領(入金)の別
● 国外の送金者、または受領者の氏名・名称
● 国外の銀行等の営業所(支店)の名称、取り次ぎ金融機関の名称
● 国外送金等にかかる相手国
● 本人口座の種類、口座番号
● 国外送金等の金額:外貨種類、外貨額、円換算額
● 送金原因 など
この調書を受け取った税務署は、上記情報から「国外送金等に関するお尋ね」作成のうえ、対象者宛に送付します。このお尋ねでは、★確定申告の有無や、★具体的な送金等の取引内容(例:海外資産の売却など)を確認してきます。また同時に、具体的な送金明細や取引内容のわかる書類(申込書)のコピーの添付も要求されます。
■ お尋ねにはウソをつかず、正直に!
◆ 2009年度は、調書の提出枚数が473万枚にも!
2012年(最新版)の「国外送金等調書」の提出枚数は564万枚で、過去4年間は連続して増加傾向にあります。実は、2009(平成21)事務年度に提出基準額が200万円超から100万円超に引き下げられたため、2009年は前年比約4割増の473万枚に激増し、その後も漸増傾向にあります。
こうしたことが引き金となって、国外で保有する財産についてもチェックを入れようとする動きにつながったものと見られます。
◆ お尋ねにはウソをついても始まらないを!
● 調書も、お尋ねも個人の財産管理が狙いだ!
税務署から「国外送金等に関するお尋ね」が届いたら、恐れずに、隠さず、正直に事実を回答することが大切です。具体的に投資したときの取引内容を記入すればよいのです。もちろん送金(投資)しただけでは、満期償還益もなく、売却してキャピタルゲインも得ていないため、納税義務はありません。この段階では、単なる事実確認なのです。
とはいえ、税務署はこうした事実確認を元に納税者の資産の管理をして、「運用収益が無申告になったり、相続時に財産が申告されていなかったり」をしっかりチェックているので、ご注意を!
● 海外投資での運用益の申告を忘れると・・・
満期や解約時の運用益について確定申告を忘れてしまえば、運用益に対する追徴課税を覚悟しなければなりません。税務署の指摘で課税となれば、本来納付すべき税金のほかに、無申告や過少申告加算税というペナルティや、本来の納付期限から実際の納付日までの延滞税までかかります。
「海外取引だから税務署には判らないだろう!」はありません。甘い考えは大ケガの元です。海外運用で儲けたら、利益は適正に申告して正々堂々と使いましょう。