日産と三菱自動車の提携話。考えれば考えるほど理解出来ない

日産による三菱自動車の救済策は、多くのメディアが「両社にとって大きなメリット。一件落着」として伝えている。しかし。2000年に行われたダイムラークライスラーと三菱自動車の提携後の動きをじっくり見てきた業界人の多くは「そう簡単にいかないだろう」と口を揃えて言う。そもそも2370億円を投じて34%の株式を買うという内容、奇しくもダイムラークライスラーの出資額&出資率とほぼ同じ。

本日の記者会見で発表された提携のメリットも、2000年のフラッシュバックのようである。当時、提携した企業が離散するという状況が一般的でなかったこともあり、多くのメディアが納得して好意的に報じたことを思い出す。御存知の通りわずか5年間でダイムラークライスラーは三菱自動車の株式を手放し、別れてしまった。提携後も三菱自動車の体質を変えられず、再びリコール隠しをしたからだ。

2000年に提携を発表した後、ダイムラークライスラーは「三菱自動車に乗り込み徹底的にチェック体勢を見なおした」と高らかに宣言したことを思い出す。ちなみに今回発覚した燃費試験時の走行抵抗の計り方の法令違反は1991年から続いている。そして2002年にトラックのタイヤが外れて女性が亡くなるという事故も、ダイムラークライスラーの安全チェックシステムの中で発生した。

三菱自動車の体質は何も変わっていなかった。ゴーンさんとしては日産とルノーのアライアインスをうまくまとめた、という自信があるのだろう。考えて頂きたい。当時の日産は2兆円以上の負債を抱え、新型車の開発さえストップしなければならないほど困窮していた。日産全体が疲れ果てていた。一方、現在の三菱自動車は4千億円の留保を持ち、業績も回復傾向。そう簡単には頭を垂れないだろう。

アライアンスやシナジー効果をアピールするけれど、日産だって電気自動車の技術は持っている。いや、モーターの制御技術や電池のノウハウなど三菱自動車を凌ぐ。東南アジアのピックアップ市場も、ここにきて日産が盛り返してきており三菱自動車の助けが必要な状況と思えない。両社の販売台数と工場の生産キャパシティなど考えれば、一緒になったから大きく収益上がると考えにくい。

もちろん悪くなることはないだろうが、日産にとって大きなメリットがあると思えない。もっと言えば、ゴーンさんがルノーと日産の総代表のポジションに居る年月だってそう長くないだろう。ポスト・ゴーンの話題も度々上がるほど。といったことを考えると、この提携話はまだまだ奥があるような気がしてならない。さらに三菱自動車の燃費不正の件も、まだ解明の道は途についてもおらず。

考えれば考えるほど理解出来ない提携劇である。