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【政治】

与野党駆け引き 障害者拒む 障害者差別解消法施行40日の国会

2014年9月、記者会見する日本ALS協会の岡部宏生副会長(左)と金沢公明さん=厚労省で

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 衆院厚生労働委員会で十日に行われた障害者の自立を後押しする目的の障害者総合支援法改正案を巡る参考人質疑で、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の出席が拒否された問題で十一日、与野党に対する批判が広がった。障害者に対する差別を禁止した障害者差別解消法が四月に施行されたばかり。法律を成立させた国会が、法の理念を踏みにじったとの思いからだ。国会では与野党が責任を押しつけ合った。 (我那覇圭)

 NPO法人「日本障害者協議会」の藤井克徳代表は十一日、「当事者抜きで当事者のことを決めるべきではない。差別解消法を成立させ、模範を示すべき国会に法の理念が浸透していないことが残念だ。差別的な対応だと感じている。経緯を検証して再発を防がなければ、せっかくの法の価値も下がってしまう」と指摘した。法律の成立を政府に働き掛けた障害者団体からも批判の声が上がる。

 藤井さんは十一日、衆院厚生労働委員会を傍聴。障害者総合支援法改正案は委員会可決された。同改正案には、会話ができない難病患者がコミュニケーションを図りやすくするため、入院中のヘルパー利用を解禁する内容が盛り込まれた。出席を拒否されたALS患者で、日本ALS協会副会長の岡部宏生さんが出席を望んだのもそのためだ。

 自民、民進両党は十一日、責任を認めなかった。民進党の山井和則国対委員長代理は記者会見で、「差別をなくそうと旗を振るべき国会で、大変な前例を残した」と自民党を批判。自民党の小此木八郎国対委員長代理は「なぜか分からないが、民進党側から『招致をやめる』という話があった」と反論した。

 出席拒否が起きたのは、別の法案を巡る対立からだ。招致を求めた民進党に対して、自民党は見返りとして政府提出の児童福祉法改正案の審議入りを要求。民進党は、野党四党が共同提出した保育士らの賃金を引き上げる法案の審議入りを求めた結果、協議は難航し、民進党は招致を断念した。

 障害者差別解消法は二〇一三年六月、国会で全会一致で成立した。障害者に対する差別を禁止し、合理的な配慮(その場で可能な配慮)を義務づけた。障害者と健常者が一緒に暮らす社会を目指すのが目的。

◆出席拒否されたALS協会副会長・岡部さんメッセージ

 衆院厚生労働委員会への出席を拒否された日本ALS協会副会長の岡部宏生さんは、代理出席した日本ALS協会常務理事の金沢公明さんに次のようなメッセージを託した。 (要旨)

 本来ならここ(厚労委)に座ってお話しさせていただいたはずですが、コミュニケーションに時間を要するということで参考人招致を取り消されました。障害者総合支援法の国会審議で障害者の参考人を拒否なさったわけです。

 国民の中には私たち障害者も存在しています。国会の、それも福祉を最も理解してくださるはずの厚労委で、障害があることで排除されたことは、深刻なこの国のありさまを示しているのではないでしょうか。

 コミュニケーションに時間がかかり議論が深まらないという懸念は一見もっとものように聞こえますが、少しの工夫があればほとんど問題なく議論できます。ただしそれには、長期間訓練した通訳の技能が必要で、この法案の内容にも直接関わっています。この場で先生方にご覧いただきたかったです。

<筋萎縮性側索硬化症(ALS)> 運動神経に異常が生じ、神経からの命令が伝わらなくなって筋肉が縮み、次第に動かなくなる病気。一方で脳の機能や目を動かす筋肉、視覚や聴覚などには異常は生じにくい。厚生労働省の指定難病で、原因はよく分かっていない。2014年末の国内の患者数は約9900人。

 

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